今でこそ、多様な使い方がされている携帯電話ですが、2000年頃ではNTTドコモの「iモード」が登場したばかりでまだまだ普及期にありました。
J−phoneの「写メール」やドコモの「iモード」の出現は、携帯電話そのものを「単なる携帯できる電話機」ではない「コミュニケーションツール」として進化させることになりますが、そこに目をつけたのがゲーム業界でした。
すでに2001年頃には、ゲーム業界には「ケータイ脅威論」のような考えがあり、携帯電話にゲームユーザーの余暇とお金が奪われたとの認識があったため、逆に携帯電話にゲーム配信を行うことで取り込んでしまおうとの試みがありました。
今回のコラムはその当時の携帯電話に、ソフトメーカーが懸けた期待とその限界を題材として構成されております。
ゲームメーカーが狙っているのは、本当はこの点であるかもしれない。コナミ北上本部長の発言に代表されるように、しきりに「将来」という言葉を連発する裏には、携帯電話利用者が、一人当たり120円程度でしかなかった利用料を今後、増やすと見込んでいるからではないだろうか。
現在、携帯コンテンツにおける客単価は120円程度でしかないが、それが、この後もずっとその水準で落ち着くとは限らない。今は、携帯電話ゲームと言っても、かつて業務用ゲームや家庭用ゲームとして世に出ていたゲームがリメイクされて、配信されているものが多いため、それほど騒がれるようなゲームは登場していない。
だが、この傾向は徐々に改善されていくと考えられる。なぜなら、過去のリメイク作品を用いるのでは無く、携帯電話独自のゲームを配信する動きが既にあるからだ。そうした流れを作りつつある一つのゲームメーカーが「ドワンゴ」だ。
2001年3月19日付の日経産業新聞に、ドワンゴのゲーム制作に携わる清水亮氏がインタビューに応じた記事がある。そこにはこういった一文があった。
「ドワンゴのゲームはかつて、通信料を含めた一カ月の利用料が十万円を超えるヘビーユーザーを続出させた逸話を持つ。『ドコモから通信料を抑制する仕組みをゲームに取り入れるよう要請されたほどだった』と清水氏は苦笑する」
この、10万円を超える利用料を払ってでもドワンゴのゲームをやりたいと思わせた成功体験は、「携帯電話独自のゲームを生み出す事によって客単価の増加を見こめる」というゲームメーカーの目論見を見事に実現させたものではなかっただろうか。
もし、携帯電話ゲームの主流が、今のようなリメイク全盛から、携帯電話独自のゲームになった場合、客単価は一体どうなるのであろうか。携帯電話でしか、そのゲームが出来ないと考えれば、ユーザーはそれ相応の金額を投入してでもやるだろう。
すると、客単価は以前の120円程度の水準が維持されるとは到底思えない。数百円や千数百円にまで伸びる可能性だって充分にあるのだ。ゲームメーカーが狙っているのはまさにここだ。
それだけに、月額500円とか、800円、 1000円といった価格の携帯電話ゲームが表れることもありえよう。この金額は携帯電話コンテンツとしては破格の値段だが、一般のゲームソフトに比べると激安なのである(通常、新作ゲームを主に遊ぶ期間は数ヶ月。仮に6800円の新作を買ったとして、3ヶ月遊ぶとすると、一月分のソフト代は2267円になる。これでは、携帯電話ゲームのほうが断然安いことになる)。
携帯電話独自のゲームを投入によって、客単価の増加・急騰は決して夢物語では無いだろう。そうなると、携帯電話コンテンツの市場規模は、以前計算していたものとは比べ物にならないくらい拡大する。
前に、一人あたりの月額使用料を120円と仮定し、3000万人が一年間利用すると、市場規模は432億円になるといった。だが、今回は客単価を600円だと仮定すると(一般的な携帯電話ゲームサイトの月額使用料300円を単純に倍にする)、市場規模は2160億円(600円×12ヶ月×3000万人)にもなってしまうのだ。
この巨大市場は、ゲームメーカーにとって非常に魅力的だ。だからこそ、ゲームメーカーはこぞって、携帯電話ゲーム市場に参入しているのである。(つづく)
→続きはこちら:第五章(最終章)「夢は叶うのか」
