第四章:『効率経営の名の下に』
タイトーの買収には株式市場の変化と村上ファンドによるスクウェア・エニックス株の大量保有が背景にある。800億円を超える豊富な現預金の有効活用を求められたスクウェア・エニックスが出した結論が同業他社の買収であった。
しかし、こうした現象はスクウェア・エニックス特有の問題だったと考えることはできない。それはスクウェア・エニックス以外にも株式を公開しているゲーム関連企業は数多くあるが、これらの企業も同じように豊富な現金を有しているからである。つまり、同様の事例がどの企業にも起こり得る可能性があるのだ。
例え、安定経営のために資金が必要であったとしても株主から出資を受けた資金を最も効率良く活用し、そこから収益を得て様々な形で株主に還元することは上場企業に求められる大きな役割のひとつである。それが達成できないのであれば、資金を株主に返還するべきであるとの意見は間違いではない。しかしながら、ゲーム関連企業は何も無駄に資金を貯め込んでいる訳ではないのも事実だ。確かに、潤沢な資金を抱えているだけでは非効率な経営だと言えるが、それはいずれ訪れるかもしれない業績低迷時を乗り切るために必要であるからこそ、蓄積してきたものなのだ。
では、この矛盾をどのように解消するべきなのか。すぐにでも出来る対策はいくつかあるだろう。例えばできるだけ多くの株主にゲーム関連企業の特徴を理解してもらえるよう投資家向けの広報活動を充実させる、などである。場合によっては、時代に逆行する形になってしまうが同業他社との株式の持ち合いなどの方法を検討する価値もあるだろう。しかし、そのような対策では問題の根本的な解決に繋がらない。なぜなら、それで経営の効率化が進む訳ではないからだ。非効率な部分が温存されるのであれば、今後も経営改善の余地があるとの指摘が続き、最終的にスクウェア・エニックスのような事例が増えてくる可能性は十分にある。
そのような事態を回避するためには、ゲーム関連企業もやはり株式市場の変化に伴い経営方針を根本的に転換する必要があるのかもしれない。多額の現金を保有する事を止め、成長分野に速やかに資金を投下し収益拡大を狙うか、さもなくばそれを株主に還元していく方針で経営をしながら、現預金が無くても低迷期を乗り切る方法を模索する必要があろう。
もしそれを拒むのであれば、ゲーム関連企業が株式市場に上場している意義をもう一度考え直す時期にあると言える。手元に資金が潤沢にあり、それをどうしても保有し続けなければならない理由があるのなら、思い切って上場を取り止める選択肢があっても良いのではないか。何も、株式市場に留まり続けることが課せられた義務ではないのだ。
上場企業に徹底した効率化を求める株主は今後も増えるだろう。彼らの期待に応えられないのであれば、株式市場からの撤退も視野に入れるべきである。スクウェア・エニックスの子会社になることを選び、上場廃止を決断したタイトーはいち早くその決断をしたと言えるのかもしれない。いずれにせよ、株式市場に上場をしているゲーム関連企業は株主が求める効率経営を如何に実践していくかが、今後問われることになる。この先、大きな決断を迫られるゲーム関連企業が出てきたとしても不思議ではないだろう。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年12月6日
2006年05月13日
2006年05月12日
「スクウェア・エニックスの苦悩 〜タイトー買収の真相〜」Part3(2005.11.22)
第三章:『黒船襲来』
株式市場における変化は上場するゲーム関連企業にも少なからず影響はある。その変化に否応なしに巻き込まれることになったのが、今年4月に村上ファンドに株式を大量取得されたスクウェア・エニックスである。これにより同社は難問を抱えることになる。
ライブドアによるニッポン放送買収問題や阪神電鉄株やTBS株等の大量取得で一躍有名になった通称「村上ファンド」と呼ばれるMACアセットマネジメントの目的は投資先の企業に積極的に働きかけることで経営の効率化を促しながら、企業価値の増大を狙い、結果として株価の上昇を通じて投資収益をあげることにある。
この経営にも口を出す「物言う株主」である村上ファンドがスクウェア・エニックスの発行済株式数の5%超を買い集めた事実が明らかになったことで、彼らが今後スクウェア・エニックスに対して何らかの経営改善策を要求してくる可能性が出てきたのだ。おそらく村上ファンドは、同社が抱える800億円を超える巨額の現金をさらなる収益拡大のための投資に振り向けるか、それが出来ないのであれば資金を配当などの形で株主に還元するように要望してくると考えられた。限りある経営資源が有意義に活用されていないのであれば、それを是正するべきだと考える村上ファンドなら800億円の資金使途に着目するのは当然であろう。
一方、スクウェア・エニックスとしては創業者の大株主がいるとは言え、村上ファンドの資金力を考えれば彼らの要望を簡単に無視することはできない。つまり村上ファンドの出現により、スクウェア・エニックスはこれまで蓄積してきた巨額の資金を何らかの形で有効的に活用しなければならなくなったのだ。
一般的に、成熟企業でなおかつ投資機会がない場合、保有する余分な資金は株主へ配当などの形で還元すべきである。だが、スクウェア・エニックスは今なお成長企業であり、この資金は今後の収益拡大のために必要な原資である。ならば、800億円の資金を企業成長のために使うしかない。そこで考えたのが同業他社の買収だったのではないか。
買収は何より即効性があり、短期間のうちに結果が出る。他社を傘下に収めることで、その企業の収益がすぐにグループ全体の業績に上積みされるからだ。さらには同じゲーム関連企業を買収すれば、同業種であるがゆえに協業を通じて新しい価値も生み出せるかもしれない。これは収益拡大のための投資として悪いものではないだろう。だからこそ、スクウェア・エニックスはタイトーの買収を決断したのではないか。
だとすると、タイトーの買収には株式市場の変化が遠因にあり、さらに村上ファンドの出現がスクウェア・エニックスに買収を決断させたと言えるだろう。もはや多額の資金を何の使用目的もなく保有することが許される時代ではなくなったからこそ、今回のタイトー買収が成立したのである。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月22日
株式市場における変化は上場するゲーム関連企業にも少なからず影響はある。その変化に否応なしに巻き込まれることになったのが、今年4月に村上ファンドに株式を大量取得されたスクウェア・エニックスである。これにより同社は難問を抱えることになる。
ライブドアによるニッポン放送買収問題や阪神電鉄株やTBS株等の大量取得で一躍有名になった通称「村上ファンド」と呼ばれるMACアセットマネジメントの目的は投資先の企業に積極的に働きかけることで経営の効率化を促しながら、企業価値の増大を狙い、結果として株価の上昇を通じて投資収益をあげることにある。
この経営にも口を出す「物言う株主」である村上ファンドがスクウェア・エニックスの発行済株式数の5%超を買い集めた事実が明らかになったことで、彼らが今後スクウェア・エニックスに対して何らかの経営改善策を要求してくる可能性が出てきたのだ。おそらく村上ファンドは、同社が抱える800億円を超える巨額の現金をさらなる収益拡大のための投資に振り向けるか、それが出来ないのであれば資金を配当などの形で株主に還元するように要望してくると考えられた。限りある経営資源が有意義に活用されていないのであれば、それを是正するべきだと考える村上ファンドなら800億円の資金使途に着目するのは当然であろう。
一方、スクウェア・エニックスとしては創業者の大株主がいるとは言え、村上ファンドの資金力を考えれば彼らの要望を簡単に無視することはできない。つまり村上ファンドの出現により、スクウェア・エニックスはこれまで蓄積してきた巨額の資金を何らかの形で有効的に活用しなければならなくなったのだ。
一般的に、成熟企業でなおかつ投資機会がない場合、保有する余分な資金は株主へ配当などの形で還元すべきである。だが、スクウェア・エニックスは今なお成長企業であり、この資金は今後の収益拡大のために必要な原資である。ならば、800億円の資金を企業成長のために使うしかない。そこで考えたのが同業他社の買収だったのではないか。
買収は何より即効性があり、短期間のうちに結果が出る。他社を傘下に収めることで、その企業の収益がすぐにグループ全体の業績に上積みされるからだ。さらには同じゲーム関連企業を買収すれば、同業種であるがゆえに協業を通じて新しい価値も生み出せるかもしれない。これは収益拡大のための投資として悪いものではないだろう。だからこそ、スクウェア・エニックスはタイトーの買収を決断したのではないか。
だとすると、タイトーの買収には株式市場の変化が遠因にあり、さらに村上ファンドの出現がスクウェア・エニックスに買収を決断させたと言えるだろう。もはや多額の資金を何の使用目的もなく保有することが許される時代ではなくなったからこそ、今回のタイトー買収が成立したのである。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月22日
2006年05月10日
「スクウェア・エニックスの苦悩 〜タイトー買収の真相〜」Part2(2005.11.15)
第二章:『株式市場の変化』
スクウェア・エニックスによるタイトー買収が成立した背景には様々な要因が考えられる。そのひとつには、タイトーの抱える資産や事業が純粋に魅力であったことが挙げられるだろう。自社コンテンツの配信先としてアミューズメント関連事業へ興味を持つようになった同社からすれば、タイトーを傘下に加えることで、この分野へ進出が可能となる。加えてアミューズメント施設部門と並んで優良部門である携帯コンテンツ事業なども取り込めるのだからスクウェア・エニックスにとっては「良い買い物」であったと言える。
だが、コンテンツ配信先としてタイトーとの連携を考えるのであれば、わざわざ買収という手段を活用しなくても可能だったのではないか。しかもスクウェア・エニックスには携帯コンテンツ事業もあり、巨額の資金を費やしてまで買収しなければならない理由は殆ど無い。では、スクウェア・エニックスはなぜタイトーの買収を決断したのか。それは同社を取り巻く環境、特に「株式市場」の変化が大きく関係しているからであろう。
ここ数年、株式市場に上場する企業に対して「保有する経営資源を最も効率的に活用するべき」として改善を求める株主が次第に増えつつある。これは近年、企業同士で株式を持ち合う傾向が大きく減り企業側に都合の良い大株主が少なくなったために、一般株主の発言力が相対的に増したことが影響している。このような株式市場の変化が今回の買収を引き起こす遠因となったと言える。
それはなぜか。そもそも、上場しているゲーム関連企業の多くは「少ない負債」と「豊富な現預金」を持っている。借金を少なくし、現金を多く持とうとする傾向は他の一般企業にも見られるものであるが、特にゲーム関連企業はそれが顕著である。なぜそのような傾向になったのかと言えば、彼らが取り扱うゲームという商材は思い通りには売れないものだからだ。娯楽品であるが故に売り上げの予測は難しい。もし、思惑が外れてゲームが売れなければ、大きな損失が発生し会社経営を圧迫することもある。仮に経営危機に陥った際に負債が大きく、保有している現預金が少なければ最悪破綻の可能性も出てくる。だからこそ、多くの企業は負債をできるだけ少なくし、現預金を豊富に持つようにしているのだ。
これまでは、そのような考え方で特に問題はなかった。しかし、株式市場は大きく変わり、効率経営を求める株主からの期待に応える必要が出てきたのだ。効率経営とは、簡単に言えば保有している資産を徹底的に効率良く使い、より高い収益を挙げることである。ゲーム関連企業の株主から見れば、この低金利時代に潤沢な現預金をそのまま持っているだけでは非効率である、と思えてしまうのだ。つまり、ゲーム関連企業は現金を豊富に持っているだけに「非効率である」との指摘がされやすくなってしまったのである。スクウェア・エニックスの場合、2005年3月期で約812億円もの巨額の現預金があり、そうした批判にさらされる可能性が他の企業よりも高いと言える。だが、この程度の批判で済めば大きな問題にならない。企業側がこの現預金は安定経営のために必要だから保有しているのだ、と株主に向けて根気良く説明し納得を得られれば良いからだ。
株式市場の変化には無関係ではいられないが、大きな問題でもない。それがスクウェア・エニックスの認識だったと思われる。しかし、今年4月に起きた「事件」が事態を一変させることになる。それが村上ファンドの登場である。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月15日
スクウェア・エニックスによるタイトー買収が成立した背景には様々な要因が考えられる。そのひとつには、タイトーの抱える資産や事業が純粋に魅力であったことが挙げられるだろう。自社コンテンツの配信先としてアミューズメント関連事業へ興味を持つようになった同社からすれば、タイトーを傘下に加えることで、この分野へ進出が可能となる。加えてアミューズメント施設部門と並んで優良部門である携帯コンテンツ事業なども取り込めるのだからスクウェア・エニックスにとっては「良い買い物」であったと言える。
だが、コンテンツ配信先としてタイトーとの連携を考えるのであれば、わざわざ買収という手段を活用しなくても可能だったのではないか。しかもスクウェア・エニックスには携帯コンテンツ事業もあり、巨額の資金を費やしてまで買収しなければならない理由は殆ど無い。では、スクウェア・エニックスはなぜタイトーの買収を決断したのか。それは同社を取り巻く環境、特に「株式市場」の変化が大きく関係しているからであろう。
ここ数年、株式市場に上場する企業に対して「保有する経営資源を最も効率的に活用するべき」として改善を求める株主が次第に増えつつある。これは近年、企業同士で株式を持ち合う傾向が大きく減り企業側に都合の良い大株主が少なくなったために、一般株主の発言力が相対的に増したことが影響している。このような株式市場の変化が今回の買収を引き起こす遠因となったと言える。
それはなぜか。そもそも、上場しているゲーム関連企業の多くは「少ない負債」と「豊富な現預金」を持っている。借金を少なくし、現金を多く持とうとする傾向は他の一般企業にも見られるものであるが、特にゲーム関連企業はそれが顕著である。なぜそのような傾向になったのかと言えば、彼らが取り扱うゲームという商材は思い通りには売れないものだからだ。娯楽品であるが故に売り上げの予測は難しい。もし、思惑が外れてゲームが売れなければ、大きな損失が発生し会社経営を圧迫することもある。仮に経営危機に陥った際に負債が大きく、保有している現預金が少なければ最悪破綻の可能性も出てくる。だからこそ、多くの企業は負債をできるだけ少なくし、現預金を豊富に持つようにしているのだ。
これまでは、そのような考え方で特に問題はなかった。しかし、株式市場は大きく変わり、効率経営を求める株主からの期待に応える必要が出てきたのだ。効率経営とは、簡単に言えば保有している資産を徹底的に効率良く使い、より高い収益を挙げることである。ゲーム関連企業の株主から見れば、この低金利時代に潤沢な現預金をそのまま持っているだけでは非効率である、と思えてしまうのだ。つまり、ゲーム関連企業は現金を豊富に持っているだけに「非効率である」との指摘がされやすくなってしまったのである。スクウェア・エニックスの場合、2005年3月期で約812億円もの巨額の現預金があり、そうした批判にさらされる可能性が他の企業よりも高いと言える。だが、この程度の批判で済めば大きな問題にならない。企業側がこの現預金は安定経営のために必要だから保有しているのだ、と株主に向けて根気良く説明し納得を得られれば良いからだ。
株式市場の変化には無関係ではいられないが、大きな問題でもない。それがスクウェア・エニックスの認識だったと思われる。しかし、今年4月に起きた「事件」が事態を一変させることになる。それが村上ファンドの登場である。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月15日
2006年05月09日
「スクウェア・エニックスの苦悩 〜タイトー買収の真相〜」Part1(2005.11.7)
第一章:『タイトー買収へ』
インベーダーゲームで一世を風靡したタイトーが、9月22日にスクウェア・エニックスの傘下に収まることが正式に決定した。スクウェア・エニックスは過半数以上のタイトー株式を公開買付という形で確保しようとしたが、結果的に多数の株主が買付に応じたため発行済株式数の93.7%を集めることに成功した(注1)。これにより買収金額は総額で600億円程度になる計算だが、将来的にはタイトーを完全子会社にする意向でさらなる株式の取得を検討しているという。
今回、スクウェア・エニックスがタイトーを買収した理由として、同社の和田社長は『アミューズメント施設で業務用ゲーム機のネット化が進み、コンテンツの提供先として重要だと判断したからだ』(注2)と述べている。タイトーは数多くのアミューズメント施設を所有しており、2005年3月期における売上高の 約半分はゲーム施設運営事業が稼ぎ出したものだ。業務用ゲーム分野への進出を考えているスクウェア・エニックスとって、タイトーの事業は魅力的であったと言えよう。
さらにタイトーにはゲーム施設運営事業の他にも携帯電話向けにコンテンツを提供する事業も行っており、こちらも好調に推移している。『両社の収益の極大化を図りたい』(注3)と意気込む和田社長としては、これらの事業などとも積極的に連携を深めて収益を拡大していく方針なのであろう。
こうしてみると、タイトーの買収はスクウェア・エニックスにとって「良い買い物」であったと思える。和田社長が言うように、ネット化の波が押し寄せているアミューズメント施設に進出することは今後を考えると重要であろう。特にオンラインゲームに強みを持つスクウェア・エニックスがアミューズメント施設にコンテンツを提供すれば、同社に利益をもたらすであろうし、タイトーとの連携を深めるのは当然の戦略だと言える。
しかし、ここでひとつの疑問がある。それは、タイトーのアミューズメント施設に自社のコンテンツを供給する程度のことであれば、買収よりも資金的な支出が少なくてすむ資本・業務提携で十分だったのではないか、ということだ。タイトーとの連携は提携でも深めることは出来るだろう。それなのに敢えて600億円もの巨額の資金を買収のために費やしたのは「過大な投資」だったと言えないだろうか。しかも、買収をして手に入るのは、家庭用ゲーム事業を手掛けてきたスクウェア・エニックスにとって未知の領域であるアミューズメント関連事業だ。彼らに優れた運営ノウハウがあるとは考えにくく、リスクの軽減という意味からも買収という選択を避け、タイトーとの提携に留めておいた方がより良い選択だったのではないだろうか。
では、そういった状況にありながら、なぜスクウェア・エニックスはタイトー買収を決断したのか。その理由として考えられるのが同社を取り巻く環境がここ数年、急激に変化したことが挙げられるだろう。もちろん、業界再編という荒波も関係していただろうが、それよりも買収に至る最も大きな要因として「株式市場の変化」が挙げられるのではないだろうか。
近年、株式市場は株主を重視する方向に変わりつつあるが東京証券取引所に上場しているスクウェア・エニックスにもその影響は少なからずある。では、それがなぜタイトー買収に結びつくのか。
今回はスクウェア・エニックスがタイトーを買収した背景には株式市場の変化にある、との仮説を証明してみることにしたい。
注1…タイトー・プレスリリース2005年9月22日「親会社等の異動及び主要株主の異動に関するお知らせ」
注2…2005年9月2日 日経産業新聞
注3…2005年8月24日 日経流通新聞MJ
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月7日
インベーダーゲームで一世を風靡したタイトーが、9月22日にスクウェア・エニックスの傘下に収まることが正式に決定した。スクウェア・エニックスは過半数以上のタイトー株式を公開買付という形で確保しようとしたが、結果的に多数の株主が買付に応じたため発行済株式数の93.7%を集めることに成功した(注1)。これにより買収金額は総額で600億円程度になる計算だが、将来的にはタイトーを完全子会社にする意向でさらなる株式の取得を検討しているという。
今回、スクウェア・エニックスがタイトーを買収した理由として、同社の和田社長は『アミューズメント施設で業務用ゲーム機のネット化が進み、コンテンツの提供先として重要だと判断したからだ』(注2)と述べている。タイトーは数多くのアミューズメント施設を所有しており、2005年3月期における売上高の 約半分はゲーム施設運営事業が稼ぎ出したものだ。業務用ゲーム分野への進出を考えているスクウェア・エニックスとって、タイトーの事業は魅力的であったと言えよう。
さらにタイトーにはゲーム施設運営事業の他にも携帯電話向けにコンテンツを提供する事業も行っており、こちらも好調に推移している。『両社の収益の極大化を図りたい』(注3)と意気込む和田社長としては、これらの事業などとも積極的に連携を深めて収益を拡大していく方針なのであろう。
こうしてみると、タイトーの買収はスクウェア・エニックスにとって「良い買い物」であったと思える。和田社長が言うように、ネット化の波が押し寄せているアミューズメント施設に進出することは今後を考えると重要であろう。特にオンラインゲームに強みを持つスクウェア・エニックスがアミューズメント施設にコンテンツを提供すれば、同社に利益をもたらすであろうし、タイトーとの連携を深めるのは当然の戦略だと言える。
しかし、ここでひとつの疑問がある。それは、タイトーのアミューズメント施設に自社のコンテンツを供給する程度のことであれば、買収よりも資金的な支出が少なくてすむ資本・業務提携で十分だったのではないか、ということだ。タイトーとの連携は提携でも深めることは出来るだろう。それなのに敢えて600億円もの巨額の資金を買収のために費やしたのは「過大な投資」だったと言えないだろうか。しかも、買収をして手に入るのは、家庭用ゲーム事業を手掛けてきたスクウェア・エニックスにとって未知の領域であるアミューズメント関連事業だ。彼らに優れた運営ノウハウがあるとは考えにくく、リスクの軽減という意味からも買収という選択を避け、タイトーとの提携に留めておいた方がより良い選択だったのではないだろうか。
では、そういった状況にありながら、なぜスクウェア・エニックスはタイトー買収を決断したのか。その理由として考えられるのが同社を取り巻く環境がここ数年、急激に変化したことが挙げられるだろう。もちろん、業界再編という荒波も関係していただろうが、それよりも買収に至る最も大きな要因として「株式市場の変化」が挙げられるのではないだろうか。
近年、株式市場は株主を重視する方向に変わりつつあるが東京証券取引所に上場しているスクウェア・エニックスにもその影響は少なからずある。では、それがなぜタイトー買収に結びつくのか。
今回はスクウェア・エニックスがタイトーを買収した背景には株式市場の変化にある、との仮説を証明してみることにしたい。
注1…タイトー・プレスリリース2005年9月22日「親会社等の異動及び主要株主の異動に関するお知らせ」
注2…2005年9月2日 日経産業新聞
注3…2005年8月24日 日経流通新聞MJ
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年11月7日
