第四章:「必要性」
外部資金を活用する事でゲーム業界の活性化を図り、海外市場における競争力をも得ようとする試みは、果たして効果があるのだろうか。もちろん当初の目論見通りに行けば、ゲーム業界に新風を吹き込むのは間違いないと言えよう。しかし、この仕組みには少なくとも二つの疑問点がある。
ひとつは、資金難により商品化されずに埋もれてしまっている有望な作品が、そもそも存在しているのかという点であり、二つ目としては企画・開発側に意図的なリスク回避行動が起き、結果的に外部資金に対して行き過ぎたリスクの押しつけが起きる可能性を捨てきれない点である。
つまり、資金を出資する側から見れば、これらの点が完全に解消されない限り「ハイリスク」だけが付きまとう危険な投資になってしまいかねないのだ。金融の専門家である証券アナリストも『はやり廃りが激しいコンテンツ作品に投資をするファンドに資金を投じるのはリスクが高い』(注6)と指摘している。だが、業界内が資金難に陥っているとの前提があったからこそ、外部資金の必要性が叫ばれたのだから、リスクの高い分野への資金投入は致し方ないとも言える。
もちろんリスクとリターンに対してそれほど過敏にならない投資家は少ないながらも存在する。『リスク分散の目的で投資対象の多様化を求めている』(注7)場合ならば、期待できる利回りが例え低くてもさほど問題にはならないし、出資者に『応援したい商品やイベントへの投資を楽しむ余裕』(注8)があれば、投資の目的がリターンだけに限定されるわけではない。こうした出資者が主体になれば、例え大きな問題を抱えていたとしても、外部資金はゲーム業界に根付いていくことになるだろう。
とはいえ、損を厭わない大らかな出資者はそれほど多くはない。資金を投じた代償として得られるはずのリターンが、初めからそのリスクに見合っただけのものが用意されていなければ、大抵の投資家は資金を投入しようとは思わないだろう。投資損益をあまり気にしない限られた投資家層から投じられる資金は、やはりどうしても限定的なものになる。外部資金によるコンテンツ制作を促進させ、それを大きな潮流にするためには間違いなく多数の投資家からの出資が必要になるのだ。そのためには何としても超過収益を稼ぎ、投資家に元本だけではなく、できるだけ高い配当を支払わなければならない。だが、その道程は冒頭に記した二つの懸念が解消されて初めて可能になるものだ。では、それらの疑問点は容易に解消できるものなのであろうか。
こうして考えていくと、果たして投資ファンドそのものが本当に必要なものなのか、ということをもう一度改めて考え直す余地があるのではないだろうか。
注6…2004年7月1日 日経産業新聞
注7…2004年12月16日 日経金融新聞
注8…2003年7月20日 日本経済新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年7月4日
2006年05月04日
2006年05月03日
「投資ファンドは本当に必要なのか?〜二つの疑問点〜」Part3(2005.6.24)
第三章:「リスクの押し付け」
業界外よりもたらされる資金がコンテンツ産業を活性化させるとの期待がある一方で、その外部資金が掘り出すべき有望な企画はそれほど多くない可能性も十分にある。仮に掘り出すべき企画が少なければ、資金の必要性はあまり無いように思える。だが、見方を変えればそんな状況だからこそ、外部資金は逆に「求められる存在」になるのかもしれない。
一般的に外部資金を利用して大きな成功を収めた場合、そこで得た利益の大部分は当然出資者に払い戻さなければならないが、目論見通りに行かなかった場合は出資者が元本の毀損という形で負担する。つまり、外部資金を活用した場合、その作品が商業的に成功しようがしまいがゲームを企画・開発した側には、あまり大きな影響が生じないような仕組みになっている場合が多いのだ。
では、ある企画発案者が優劣の分かれた二つの企画を保有していたとしよう。もちろん発案者は、その企画から得られる自らの利益が最も高くなるように商品化を検討している。その際、発案者が外部資金を積極活用したがるのはどちらの企画になるだろうか。
外部資金を活用すれば、リスクが無い代わりにあまり大きな利益も見込めなくなるのが特徴だ。ならば、わざわざ外部資金を活用して優秀な企画の方を商品化しようと考えるだろうか。その企画が本当に優秀であり、なおかつ少しでも高いリターンを求めるのなら、外部資金を活用しなければならない理由は殆ど無く、むしろ業界内から既存の方法によって資金調達を行った方が、より高い収益を挙げられるだろう。資金難と言われてはいるが、優秀な企画であれば業界内からの出資は十分に期待できる。
一方、大きな期待ができない企画であれば、外部資金の活用は有効な手段となる。なぜなら外部資金を活用する方がよりリスクの軽減に繋がるからだ。もし結果が振るわなかったとしても、赤字は外部の出資者が被るだけである。もちろんそのゲームソフトの販売が成功した場合は外部の出資者へ利益を配分しなければならないが、それでも企画・開発側には大きなメリットがある。
それは、続編にあたる次回作を今度は外部資金を活用せずに開発すれば良いからだ。ヒットしたゲームの続編はかなりの確率で売れるだろうと予測ができる。リスクが低くそれなりの収益が見込めるのだから、外部資金を続けて利用する理由は見当たらない。
このように上手く資金を使い分ける事によって、ゲームビジネスが抱えるリスクだけを外部の出資者に負わせ、自らはリスクを取ること無くゲームの開発を行う事ができるのである。
もし、この予測が正しければリスクの高い案件だけが、外部資金を活用することになってしまいかねない。資金難に陥っている業界を救うという目的が外部資金にある以上、資金が集まらない企画に対して出資することは今後増加していくだろう。だがそれは、資金が積極的にハイリスクの分野に投じられ、投資元本すら満足に回収できない事例が同じように増えていくことと同義である。
もちろん、こうした事が発生しないような対策は執られるだろうが、完全にそれを排除できる保証はない。この問題に対して有効な防止策を講じる事ができなければ、この仕組みそのものが比較的早い段階で頓挫してしまう可能性を否定することはできないだろう。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年6月24日
業界外よりもたらされる資金がコンテンツ産業を活性化させるとの期待がある一方で、その外部資金が掘り出すべき有望な企画はそれほど多くない可能性も十分にある。仮に掘り出すべき企画が少なければ、資金の必要性はあまり無いように思える。だが、見方を変えればそんな状況だからこそ、外部資金は逆に「求められる存在」になるのかもしれない。
一般的に外部資金を利用して大きな成功を収めた場合、そこで得た利益の大部分は当然出資者に払い戻さなければならないが、目論見通りに行かなかった場合は出資者が元本の毀損という形で負担する。つまり、外部資金を活用した場合、その作品が商業的に成功しようがしまいがゲームを企画・開発した側には、あまり大きな影響が生じないような仕組みになっている場合が多いのだ。
では、ある企画発案者が優劣の分かれた二つの企画を保有していたとしよう。もちろん発案者は、その企画から得られる自らの利益が最も高くなるように商品化を検討している。その際、発案者が外部資金を積極活用したがるのはどちらの企画になるだろうか。
外部資金を活用すれば、リスクが無い代わりにあまり大きな利益も見込めなくなるのが特徴だ。ならば、わざわざ外部資金を活用して優秀な企画の方を商品化しようと考えるだろうか。その企画が本当に優秀であり、なおかつ少しでも高いリターンを求めるのなら、外部資金を活用しなければならない理由は殆ど無く、むしろ業界内から既存の方法によって資金調達を行った方が、より高い収益を挙げられるだろう。資金難と言われてはいるが、優秀な企画であれば業界内からの出資は十分に期待できる。
一方、大きな期待ができない企画であれば、外部資金の活用は有効な手段となる。なぜなら外部資金を活用する方がよりリスクの軽減に繋がるからだ。もし結果が振るわなかったとしても、赤字は外部の出資者が被るだけである。もちろんそのゲームソフトの販売が成功した場合は外部の出資者へ利益を配分しなければならないが、それでも企画・開発側には大きなメリットがある。
それは、続編にあたる次回作を今度は外部資金を活用せずに開発すれば良いからだ。ヒットしたゲームの続編はかなりの確率で売れるだろうと予測ができる。リスクが低くそれなりの収益が見込めるのだから、外部資金を続けて利用する理由は見当たらない。
このように上手く資金を使い分ける事によって、ゲームビジネスが抱えるリスクだけを外部の出資者に負わせ、自らはリスクを取ること無くゲームの開発を行う事ができるのである。
もし、この予測が正しければリスクの高い案件だけが、外部資金を活用することになってしまいかねない。資金難に陥っている業界を救うという目的が外部資金にある以上、資金が集まらない企画に対して出資することは今後増加していくだろう。だがそれは、資金が積極的にハイリスクの分野に投じられ、投資元本すら満足に回収できない事例が同じように増えていくことと同義である。
もちろん、こうした事が発生しないような対策は執られるだろうが、完全にそれを排除できる保証はない。この問題に対して有効な防止策を講じる事ができなければ、この仕組みそのものが比較的早い段階で頓挫してしまう可能性を否定することはできないだろう。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年6月24日
2006年05月02日
「投資ファンドは本当に必要なのか?〜二つの疑問点〜」Part2(2005.6.6)
第二章:「休眠アイディアの存在」
日本のコンテンツに与えられる評価は決して低くないのに、海外市場で稼ぎ出す収益はごく僅かなものにすぎない。その理由として、資金難が背景にあると経済産業省は指摘する。では、資金さえ用意できれば、国内だけではなく海外市場においても高い収益を稼ぐことができる有望な作品を創り出すことができるのだろうか。
しかし、こうした目論見が上手く動いていくためには、数多くの有望な企画が資金難ゆえに眠ってしまっている、という前提がまず必要になると思われる。だが、有望な企画というものは、期待されるほど多く埋もれているのだろうか。
残念ながらゲーム業界からはあまり良い話は聞こえてこない。任天堂の前社長である山内氏は過去にこう述べていた事がある。『ほとんどのテレビゲームのネタは出尽くし、ネタ不足が続いている』(注5)。さらにはゲーム受託開発の専業メーカーであるトーセの坂口氏も『ゲームの企画からすべてをやってくれというメーカーが増えている』(同)と口にする。
こうした主張からは、むしろ資金的な問題よりもゲームの企画そのものを生み出す事に、四苦八苦しているソフトメーカーの苦悩を垣間見る事が出来る。つまり、現状のゲーム業界の問題点は資金不足のために良い企画を商品化できない事ではなく、商品化できるような良い企画が少ない事こそが、早急に解決しなければならない課題となっているのだ。
そもそも大手のソフトメーカーの多くは、現預金を多めに持つ傾向がある。主な企業が保有している2004年12月末の現預金を列挙してみるとスクウェア・エニックスが724億円、ナムコ243億円、コナミ767億円、タイトー103億円、カプコン379億円などである。この数字を見れば、ソフトメーカーが本当に良い企画に対して資金を出せないぐらい資金難に喘いでいるとは想像しづらい。
確かに、業界外からの資金流入によって、以前では決して商品化できなかったようなゲームが数多く生まれてくる可能性はある。当然、その中からはヒットする作品も出てくるだろう。だが、全体的にそのような作品は多くはないと推測できてしまう。なぜなら、外部の出資者にさえ素晴らしいと感じさせるような優れた企画が本当に存在しているのであれば、例え業界内が資金不足であろうと無かろうと、誰かがいち早くそれを拾い上げているはずだからである。ゲーム市場の成長性が鈍化し、決して好況とは言えない状況にあるからこそ、ソフトメーカーがみすみす有望な作品を見逃すとは考えにくいのだ。
つまり、本来であればその外部資金が掘り起こすべき「有望な作品」は業界内にそれほど存在していないと推測できる。そこにあるはずの企画が眠っていないとすれば、外部資金はゲーム業界に一体何をもたらすのであろうか。
注5…2002年3月1日 日経産業新聞
参考資料…各社「2005年3月期 第3四半期財務・業績の概況 」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年6月6日
日本のコンテンツに与えられる評価は決して低くないのに、海外市場で稼ぎ出す収益はごく僅かなものにすぎない。その理由として、資金難が背景にあると経済産業省は指摘する。では、資金さえ用意できれば、国内だけではなく海外市場においても高い収益を稼ぐことができる有望な作品を創り出すことができるのだろうか。
しかし、こうした目論見が上手く動いていくためには、数多くの有望な企画が資金難ゆえに眠ってしまっている、という前提がまず必要になると思われる。だが、有望な企画というものは、期待されるほど多く埋もれているのだろうか。
残念ながらゲーム業界からはあまり良い話は聞こえてこない。任天堂の前社長である山内氏は過去にこう述べていた事がある。『ほとんどのテレビゲームのネタは出尽くし、ネタ不足が続いている』(注5)。さらにはゲーム受託開発の専業メーカーであるトーセの坂口氏も『ゲームの企画からすべてをやってくれというメーカーが増えている』(同)と口にする。
こうした主張からは、むしろ資金的な問題よりもゲームの企画そのものを生み出す事に、四苦八苦しているソフトメーカーの苦悩を垣間見る事が出来る。つまり、現状のゲーム業界の問題点は資金不足のために良い企画を商品化できない事ではなく、商品化できるような良い企画が少ない事こそが、早急に解決しなければならない課題となっているのだ。
そもそも大手のソフトメーカーの多くは、現預金を多めに持つ傾向がある。主な企業が保有している2004年12月末の現預金を列挙してみるとスクウェア・エニックスが724億円、ナムコ243億円、コナミ767億円、タイトー103億円、カプコン379億円などである。この数字を見れば、ソフトメーカーが本当に良い企画に対して資金を出せないぐらい資金難に喘いでいるとは想像しづらい。
確かに、業界外からの資金流入によって、以前では決して商品化できなかったようなゲームが数多く生まれてくる可能性はある。当然、その中からはヒットする作品も出てくるだろう。だが、全体的にそのような作品は多くはないと推測できてしまう。なぜなら、外部の出資者にさえ素晴らしいと感じさせるような優れた企画が本当に存在しているのであれば、例え業界内が資金不足であろうと無かろうと、誰かがいち早くそれを拾い上げているはずだからである。ゲーム市場の成長性が鈍化し、決して好況とは言えない状況にあるからこそ、ソフトメーカーがみすみす有望な作品を見逃すとは考えにくいのだ。
つまり、本来であればその外部資金が掘り起こすべき「有望な作品」は業界内にそれほど存在していないと推測できる。そこにあるはずの企画が眠っていないとすれば、外部資金はゲーム業界に一体何をもたらすのであろうか。
注5…2002年3月1日 日経産業新聞
参考資料…各社「2005年3月期 第3四半期財務・業績の概況 」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年6月6日
2006年05月01日
「投資ファンドは本当に必要なのか?〜二つの疑問点〜」Part1(2005.5.15)
第一章:「資金難の解消」
1990年代以降、不景気に喘ぐ日本経済の中で数少ない成長市場と目されてきた国内ゲーム市場。しかし、さしものゲーム市場も高成長を長期間に渡って持続する事はできず、90年代後半にピークを迎えてからは明らかに成長速度が衰えてしまった。この影響を受けたゲームソフトメーカーの多くは、市場の成熟化に伴い苦戦を強いられている。
一方で、国内市場の成熟化とは裏腹に海外のゲーム市場は好調さを持続している。市場規模が大きく、今後も成長が期待できる海外市場はソフトメーカーにとって、以前にも増して重要な存在になりつつある。
しかし、市場規模が最も大きい米国ゲーム市場における日本企業のシェアは、一昔よりも縮小しているのが現状だ。『98年に49%あった日本製ゲームソフトのシェアは、今年(2004年)は29%にまで落ち込んでいるという』(注1)。米国市場でのシェア低下はもちろんゲームソフトの海外総出荷額全体にも大きな影響を与える。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)によると2000年に2847億円の海外総出荷額を記録して以来、年々減少傾向が続いており2003年には1993億円にまで落ち込んでしまっているという。
海外市場で苦戦している日本のコンテンツは、何もゲームの分野だけではない。ゲームソフトに、映画、アニメ、音楽、出版などの分野を加えた全体の市場規模は『約九兆五千億円』(注2)と見積もられているが、その中で海外市場で稼ぐ割合はわずか『三%』(同)に過ぎないとの指摘がある。対する『米国はこのうち約四割』(同)が海外市場で占めている程なのだから、日本の場合はかなり少ないと言えるだろう。
では、なぜ海外市場で稼ぐことができないのか。もちろん様々の要因が考えられるだろうが、その原因のひとつとして国の行政機関である経済産業省は『資金難』(注3)を挙げている。つまり資金不足が何かと足枷になっているために、日本のコンテンツが海外で振るわないのだと、彼らはそのように考えているのだ。
経産省がこうした指摘を行う背景には、当然ながら彼らなりの思惑がある。それは、停滞気味の業界全体を活性化させ、コンテンツ産業を『製造業並みに輸出できる産業に育てたい』(注4)との目論見だ。しかしそれを実現するためには資金難を解消しなければならない。そこで重要になるのが、昨年行われた信託業法の改正である。この法改正がなされた事によって今後、業界外からの投資を誘引するような仕組みができあがるという。つまり、制度が変わる事で外部からの資金の流入が容易になり、経産省が問題と考えている「資金難」の解消が可能になるのだ。
経産省の指摘が正しければ『コンテンツ(情報の内容)制作への新規参入を促し、競争力のある輸出産業に育てる』(同)という目的は実現できるのかもしれない。ただ、果たしてその試みは上手くいくのか、という点は注視する必要があるだろう。今回は、経産省の思惑通り資金的な問題さえ解決すれば日本のコンテンツ産業を振興する事ができるのかどうかを、ゲームソフトの分野に焦点を絞って考えてみる事にしたい。
注1…「ニューズウイーク日本版 2004.11.3」 P56 阪急コミュニケーションズ カッコ内は筆者
注2…2003年6月5日 日本経済新聞
注3…2003年6月10日 日経金融新聞
注4…2003年1月13日 日本経済新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年5月15日
1990年代以降、不景気に喘ぐ日本経済の中で数少ない成長市場と目されてきた国内ゲーム市場。しかし、さしものゲーム市場も高成長を長期間に渡って持続する事はできず、90年代後半にピークを迎えてからは明らかに成長速度が衰えてしまった。この影響を受けたゲームソフトメーカーの多くは、市場の成熟化に伴い苦戦を強いられている。
一方で、国内市場の成熟化とは裏腹に海外のゲーム市場は好調さを持続している。市場規模が大きく、今後も成長が期待できる海外市場はソフトメーカーにとって、以前にも増して重要な存在になりつつある。
しかし、市場規模が最も大きい米国ゲーム市場における日本企業のシェアは、一昔よりも縮小しているのが現状だ。『98年に49%あった日本製ゲームソフトのシェアは、今年(2004年)は29%にまで落ち込んでいるという』(注1)。米国市場でのシェア低下はもちろんゲームソフトの海外総出荷額全体にも大きな影響を与える。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)によると2000年に2847億円の海外総出荷額を記録して以来、年々減少傾向が続いており2003年には1993億円にまで落ち込んでしまっているという。
海外市場で苦戦している日本のコンテンツは、何もゲームの分野だけではない。ゲームソフトに、映画、アニメ、音楽、出版などの分野を加えた全体の市場規模は『約九兆五千億円』(注2)と見積もられているが、その中で海外市場で稼ぐ割合はわずか『三%』(同)に過ぎないとの指摘がある。対する『米国はこのうち約四割』(同)が海外市場で占めている程なのだから、日本の場合はかなり少ないと言えるだろう。
では、なぜ海外市場で稼ぐことができないのか。もちろん様々の要因が考えられるだろうが、その原因のひとつとして国の行政機関である経済産業省は『資金難』(注3)を挙げている。つまり資金不足が何かと足枷になっているために、日本のコンテンツが海外で振るわないのだと、彼らはそのように考えているのだ。
経産省がこうした指摘を行う背景には、当然ながら彼らなりの思惑がある。それは、停滞気味の業界全体を活性化させ、コンテンツ産業を『製造業並みに輸出できる産業に育てたい』(注4)との目論見だ。しかしそれを実現するためには資金難を解消しなければならない。そこで重要になるのが、昨年行われた信託業法の改正である。この法改正がなされた事によって今後、業界外からの投資を誘引するような仕組みができあがるという。つまり、制度が変わる事で外部からの資金の流入が容易になり、経産省が問題と考えている「資金難」の解消が可能になるのだ。
経産省の指摘が正しければ『コンテンツ(情報の内容)制作への新規参入を促し、競争力のある輸出産業に育てる』(同)という目的は実現できるのかもしれない。ただ、果たしてその試みは上手くいくのか、という点は注視する必要があるだろう。今回は、経産省の思惑通り資金的な問題さえ解決すれば日本のコンテンツ産業を振興する事ができるのかどうかを、ゲームソフトの分野に焦点を絞って考えてみる事にしたい。
注1…「ニューズウイーク日本版 2004.11.3」 P56 阪急コミュニケーションズ カッコ内は筆者
注2…2003年6月5日 日本経済新聞
注3…2003年6月10日 日経金融新聞
注4…2003年1月13日 日本経済新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2005年5月15日
