第四章:「もう一つの効用」
ゲームビジネスにおける最大のリスクは、収益の変動リスクである。この難点を少しでも抑えることがソフトメーカーの長年の課題となってきた。だからこそ、これまで業績の安定化のために彼らは様々な経営努力を重ねてきた。そのひとつが事業の多角化である。カジノ事業やスポーツクラブ運営事業を手掛けているコナミや、福祉事業に進出しているナムコ、ベンチャーキャピタル事業を運営しているコーエーなどはその一例であると言えよう。
だが、その一方でソフトメーカーの多角化が推進されると、本業からの乖離が進んでしまう恐れがある。確かに、その他の事業分野を引き入れて、企業全体の体質強化を図る方法は決して悪いやり方ではない。しかし、このままゲームビジネス以外の分野を順調に拡大させてしまった場合、果たしてソフトメーカーはこれからもゲームを本業として考えてくれるだろうか。
安定性の確保のために今後も多角化を進めるのであれば、ソフトメーカーは意欲的に新規事業を獲得しようとするだろうし、その中でゲームビジネスよりも高い成長力を有する事業を確保することも、もちろん考えられる。そのような状況になった時、ソフトメーカーは安定性に欠け、なおかつ成長力が失われつつあるゲーム市場に対してこれまでのように、限りある経営資源を投入し続けてくれるだろうか。もしかすると彼らは、ゲームビジネスよりも新規事業へ力を入れた方がより企業価値の向上に繋がる、と判断するかもしれない。
つまり、ソフトメーカーの多角化が順調に成功すればするほど経営資源の再配分が行われる可能性が高まるのだ。経営資源の再配分とは、ゲーム事業からの撤退あるいは縮小を意味する。もし、大手のソフトメーカー数社がゲーム事業からの撤退・縮小を決断すれば、ゲーム業界は大きな打撃を被ることになるだろう。
しかし、リメイクソフトを有効に活用することができれば、そのような最悪な事態を回避できるかもしれない。なぜなら、リメイクソフトはゲームビジネスの安定化に貢献できるからだ。過去にヒット作と呼ばれたゲームソフトのリメイク版ならば、手堅い販売本数を期待できる。もちろん、リメイクソフトがゲームビジネスを完全に安定させるわけではないが、ゲームビジネスの波を多少なりとも平らにすることができるのだ。この意義は決して小さくない。
多角化を進めるソフトメーカーはゲームビジネスの不安定性を懸念しているからこそ、新規事業への進出を図っている。しかし、リメイクソフトを有効に活用することでゲームビジネスの安定性が増せば、事業の多角化を強く進める必要が無くなる。企業としての安定性をゲームビジネスによって得られれば、少なくともゲームビジネスからの撤退というゲーム業界にとって最悪の選択をすることはなくなるだろう。
リメイクソフトの活躍の場は、ゲーム市場の成長性が鈍化する中で、今後さらに増えてくると思われる。過去数十年に渡って偉大な先人達が蓄積し続けてきた「遺産」からの"配当"は、ゲーム業界に大きな恩恵をもたらすことになるだろう。
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年10月5日
2006年05月21日
2006年05月20日
「リメイクソフトの台頭 〜積極活用の背景〜」Part3(2004.9.27)
第三章:「歴史的な必然」
『事業の不安定さとは常に背中合わせ』(注3)。コナミ取締役である館野氏は、過去にゲームビジネスのリスクをこう表現した事がある。ヒット作の有無で収益が大きく変動するゲームビジネスでは例え現状が良くても、それが将来の成長を保証するわけではない。ゲームは必需品ではない以上、どうしても気まぐれなユーザーの嗜好に左右されがちになる。そのため、ゲーム関連企業は安定性に乏しい。これはゲームビジネスを本業としている企業の宿命といっても良いだろう。舘野氏の言葉は、ゲームビジネスの性質を簡潔に表していると言える。
だが、これまでは多少の不安定さを孕んでいたとしても、ゲーム市場の高い成長力が何とかカバーしてきた。ソフトメーカーも高成長は今後も保たれると予測していたからこそ、このマイナス点を許容することができていたのだ。しかし、現況は厳しい状態が続いている。どんなに急成長を続けていた市場でも長い年月が過ぎれば成熟期が訪れるように、ゲーム市場も90年代後半から成長の鈍化が鮮明になってきている。一方、リスク要因として挙げられてきた不安定さは、市場そのものの成長性が薄れつつある中でも、未だに解消されていない。そのためにゲーム市場が抱える欠点がいっそう目立つ結果となっている。
そういった状況下にあっても、今日まで数十本あるいは数百本ものゲームソフトが毎年途絶えることなく市場に送り出されてきた。そのため膨大な数に上る既発売のゲームソフトが蓄積され続けることになったが、それらのゲームソフトの中にはドラゴンクエストシリーズのようにリメイクソフトとしても十分通用するヒット作が数多く眠っている。リメイクソフトであれば過去の売上を基にある程度の販売本数を見込むことができるのだから、これを上手く用いることで、長い間懸案となっていたゲーム市場における不安定さの緩和が可能となる。ならば、このリメイクソフトの特性を積極的に利用しようと、ソフトメーカーが考えるのは当然と言える。
数十年という長い時間が経過すれば、市場は当然ながら成熟するだろうし、同時に既発売のゲームソフトもかなり蓄積される。こうしてゲーム市場の成熟化と共に周囲の環境が徐々にリメイクソフトの活用に向けて醸成されつつあったからこそ、ソフトメーカーがリメイクソフトを重要なアイテムとして活用するようになったのである。つまり、彼らがリメイクソフトに注力することは"歴史的な必然"だったと言っても過言ではないのだ。
しかし、その過程の中でリメイクソフトが思わぬ副産物をゲーム業界にもたらす可能性がある。それは、もしかするとゲーム業界の危機を未然に防ぐことができるかもしれない。では、リメイクソフトがもたらす副産物とゲーム業界の危機とは何か。それを、最後に考えることにしたい。
注3…1999年3月22日 日本経済新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月27日
『事業の不安定さとは常に背中合わせ』(注3)。コナミ取締役である館野氏は、過去にゲームビジネスのリスクをこう表現した事がある。ヒット作の有無で収益が大きく変動するゲームビジネスでは例え現状が良くても、それが将来の成長を保証するわけではない。ゲームは必需品ではない以上、どうしても気まぐれなユーザーの嗜好に左右されがちになる。そのため、ゲーム関連企業は安定性に乏しい。これはゲームビジネスを本業としている企業の宿命といっても良いだろう。舘野氏の言葉は、ゲームビジネスの性質を簡潔に表していると言える。
だが、これまでは多少の不安定さを孕んでいたとしても、ゲーム市場の高い成長力が何とかカバーしてきた。ソフトメーカーも高成長は今後も保たれると予測していたからこそ、このマイナス点を許容することができていたのだ。しかし、現況は厳しい状態が続いている。どんなに急成長を続けていた市場でも長い年月が過ぎれば成熟期が訪れるように、ゲーム市場も90年代後半から成長の鈍化が鮮明になってきている。一方、リスク要因として挙げられてきた不安定さは、市場そのものの成長性が薄れつつある中でも、未だに解消されていない。そのためにゲーム市場が抱える欠点がいっそう目立つ結果となっている。
そういった状況下にあっても、今日まで数十本あるいは数百本ものゲームソフトが毎年途絶えることなく市場に送り出されてきた。そのため膨大な数に上る既発売のゲームソフトが蓄積され続けることになったが、それらのゲームソフトの中にはドラゴンクエストシリーズのようにリメイクソフトとしても十分通用するヒット作が数多く眠っている。リメイクソフトであれば過去の売上を基にある程度の販売本数を見込むことができるのだから、これを上手く用いることで、長い間懸案となっていたゲーム市場における不安定さの緩和が可能となる。ならば、このリメイクソフトの特性を積極的に利用しようと、ソフトメーカーが考えるのは当然と言える。
数十年という長い時間が経過すれば、市場は当然ながら成熟するだろうし、同時に既発売のゲームソフトもかなり蓄積される。こうしてゲーム市場の成熟化と共に周囲の環境が徐々にリメイクソフトの活用に向けて醸成されつつあったからこそ、ソフトメーカーがリメイクソフトを重要なアイテムとして活用するようになったのである。つまり、彼らがリメイクソフトに注力することは"歴史的な必然"だったと言っても過言ではないのだ。
しかし、その過程の中でリメイクソフトが思わぬ副産物をゲーム業界にもたらす可能性がある。それは、もしかするとゲーム業界の危機を未然に防ぐことができるかもしれない。では、リメイクソフトがもたらす副産物とゲーム業界の危機とは何か。それを、最後に考えることにしたい。
注3…1999年3月22日 日本経済新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月27日
2006年05月19日
「リメイクソフトの台頭 〜積極活用の背景〜」Part2(2004.9.21)
第二章:「問題点」
ゲーム市場の縮小傾向に歯止めが掛からない状況下にあって、過去に開発したソフト資産を活かすことができれば、ソフトメーカーにとって大いにプラスとなる。なぜなら、どんなに期待をかけた新作ソフトであっても実際の販売本数は未知数である一方、過去にヒットを飛ばしたゲームソフトのリメイク版であれば過去の実績を基に、ある程度の売上を見込むことができるからだ。
良い例がドラゴンクエストシリーズのリメイク作品群だろう。1993年に「ドラゴンクエスト1・2」が発売されて以来、家庭用ゲーム機向けに販売されたリメイクソフトはすべて100万本を超えるヒットを記録している。2004年3月に発売された「ドラゴンクエスト5 天空の花嫁」もリメイクソフトでありながら、出荷本数150万本を超えるヒットを記録した。これはドラゴンクエストシリーズのリメイク作品の中でも過去最多である。この結果、スクウェア・エニックスの2004年3月期の業績は、好調な出版事業やオンラインゲーム事業なども寄与したために、当初計画を上回る数字を残した。
だが、このようにリメイクソフトが売れれば売れるほど、逆にゲーム市場における問題点も浮き彫りにされてくる。それは「新作ソフトの不振」である。リメイクソフトがよく売れてしまう現在のゲーム市場の状況を、ある証券アナリストは端的に『新作がヒットしなくなった』(注2)と分析する。さらに、なぜ新作ソフトが以前のようにヒットしなくなったのかという原因に関しては『ゲームユーザーの保守化が進んでいる』(同)ことが考えられるとしながらも、『過去のリメイク版が売れるということは、現状の開発者のアイデアが枯渇してきているのかもしれない』(同)とも言及し、問題はゲームユーザーばかりではなく、開発側にもあると述べている。
新作が売れない状況は早急に解決しなければならない課題であり、ソフトメーカーとしても何らかの手を打ち出す必要がある。しかし、そういった指摘をされながらも、彼らはリメイクソフトに注力する姿勢を隠そうとはしない。なぜアイデアの枯渇だと言われながらもソフトメーカーは態度を変えようとはしないのか。もしかすると「ゲーム市場が不振だから」という動機の他にも、何か別の理由があるからこそ、このような状況を続けているのではないだろうか。
では、その理由とはいったいどういうものなのか。次は、アイデアが枯渇していると批判されながらもリメイクソフトに頼った背景には、相当の理由があったことを明らかにしていきたい。
注2…『UFJつばさ証券株式会社 モーニング・コメント・サマリー』2004年8月17日
参考文献…「Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト」2001年1月5日
同…「スクウェア・エニックス プレスリリース」・「“ドラゴンクエストV”出荷本数150万本突破」 2004年4月8日
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月21日
ゲーム市場の縮小傾向に歯止めが掛からない状況下にあって、過去に開発したソフト資産を活かすことができれば、ソフトメーカーにとって大いにプラスとなる。なぜなら、どんなに期待をかけた新作ソフトであっても実際の販売本数は未知数である一方、過去にヒットを飛ばしたゲームソフトのリメイク版であれば過去の実績を基に、ある程度の売上を見込むことができるからだ。
良い例がドラゴンクエストシリーズのリメイク作品群だろう。1993年に「ドラゴンクエスト1・2」が発売されて以来、家庭用ゲーム機向けに販売されたリメイクソフトはすべて100万本を超えるヒットを記録している。2004年3月に発売された「ドラゴンクエスト5 天空の花嫁」もリメイクソフトでありながら、出荷本数150万本を超えるヒットを記録した。これはドラゴンクエストシリーズのリメイク作品の中でも過去最多である。この結果、スクウェア・エニックスの2004年3月期の業績は、好調な出版事業やオンラインゲーム事業なども寄与したために、当初計画を上回る数字を残した。
だが、このようにリメイクソフトが売れれば売れるほど、逆にゲーム市場における問題点も浮き彫りにされてくる。それは「新作ソフトの不振」である。リメイクソフトがよく売れてしまう現在のゲーム市場の状況を、ある証券アナリストは端的に『新作がヒットしなくなった』(注2)と分析する。さらに、なぜ新作ソフトが以前のようにヒットしなくなったのかという原因に関しては『ゲームユーザーの保守化が進んでいる』(同)ことが考えられるとしながらも、『過去のリメイク版が売れるということは、現状の開発者のアイデアが枯渇してきているのかもしれない』(同)とも言及し、問題はゲームユーザーばかりではなく、開発側にもあると述べている。
新作が売れない状況は早急に解決しなければならない課題であり、ソフトメーカーとしても何らかの手を打ち出す必要がある。しかし、そういった指摘をされながらも、彼らはリメイクソフトに注力する姿勢を隠そうとはしない。なぜアイデアの枯渇だと言われながらもソフトメーカーは態度を変えようとはしないのか。もしかすると「ゲーム市場が不振だから」という動機の他にも、何か別の理由があるからこそ、このような状況を続けているのではないだろうか。
では、その理由とはいったいどういうものなのか。次は、アイデアが枯渇していると批判されながらもリメイクソフトに頼った背景には、相当の理由があったことを明らかにしていきたい。
注2…『UFJつばさ証券株式会社 モーニング・コメント・サマリー』2004年8月17日
参考文献…「Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト」2001年1月5日
同…「スクウェア・エニックス プレスリリース」・「“ドラゴンクエストV”出荷本数150万本突破」 2004年4月8日
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月21日
2006年05月18日
「リメイクソフトの台頭 〜積極活用の背景〜」Part1(2004.9.13)
第一章:「再利用」
90年代後半から長期間にわたって低迷が続き、2000年からは毎年のように前年比マイナスを記録してきたゲームソフト市場だが、2003年もその傾向に歯止めが掛からなかったようだ。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が推計した2003年の国内ゲーム関連の市場規模は前年比11%減の4462億円であったという。この数字は、国内のゲーム関連市場がピークであった1997年の約6割程度の水準であり、スーパーファミコンがゲーム市場の王者として君臨していた1992、93年頃の市場規模とあまり変わりがない。
国内市場の縮小を打開するため、大手のソフトメーカーは海外市場へ積極的に進出している。日本市場の低迷とは裏腹に、高い成長が続く北米や欧州などの海外市場がもたらす恩恵に与ろうとしているのだが、必ずしも日本企業の思惑通りにはなっていない。なぜなら、ソフトウェアの海外総出荷額は2000年から毎年二桁の減少を続けてきているからだ。2000年に2847億円の出荷額を記録して以来、年々その数字は漸減し、2003年にはついに1,993億円にまで落ち込んでしまった。わずか3年で三割も減少してしまったのである。もちろん、出荷額が減少したからと言ってすべてのソフトメーカーが悪影響を受けているわけではない。だが、それでもこの結果は海外での日本企業の好調さを示すものではないだろう。数字から言えば、海外市場での日本企業の立場は徐々に弱いものになってきているのだ。
そのような苦境にある中で、多くのソフトメーカーは自社が保有する“ある資産”に、これまで以上に注目し始めている。その“ある資産”とは「過去に販売したゲームソフト」のことである。
以前から、既発売のゲームソフトがリメイクされて再発売される事はあったが、最近は過去にヒットしたゲームの続編を新たに開発しようとする動きや、供給媒体をゲーム機だけではなく携帯電話などにも広げようとする動きが活発化している。ハドソンがPCエンジン用ゲームソフトとして販売されていた「天外魔境」シリーズの続編を新たに制作すると発表したり、スクウェア・エニックスが同社の看板ソフトである「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」を携帯電話向けに移植したのは、その一例と言えよう。
こうした一連の傾向を象徴しているのが、ファミコンミニの登場であろう。ファミコン20周年を記念して任天堂が、人気のあったファミリーコンピューター用ゲームをゲームボーイアドバンス向けに移植し「ファミコンミニ」シリーズとして発売したが結果は好調で『7月までに計270万本を出荷した』(注1)という。現在はシリーズ第三弾が販売中なのだから「ファミコンミニ」は十分成功したと言える。
任天堂の成功例を見れば、既発売のソフト資産を再び利用することはソフトメーカーにとって決して悪い話ではないように思える。だが、その裏返しとして、わざわざ過去のソフトに注目しなければならないほど、ソフトメーカーを取り巻く環境は厳しいということでもある。今回は、ソフトメーカーが新たな光明を見出そうとしているリメイクソフトについて考えてみる事にしたい。
注1…「Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト」2004年8月23日
参考文献…「週刊東洋経済」 P46 東洋経済新報社 2003年8月30日
同…「CESA プレスリリース」 2004年7月26日
同…「株式会社明響社 2003年9月期 中間決算説明会資料」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月13日
90年代後半から長期間にわたって低迷が続き、2000年からは毎年のように前年比マイナスを記録してきたゲームソフト市場だが、2003年もその傾向に歯止めが掛からなかったようだ。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が推計した2003年の国内ゲーム関連の市場規模は前年比11%減の4462億円であったという。この数字は、国内のゲーム関連市場がピークであった1997年の約6割程度の水準であり、スーパーファミコンがゲーム市場の王者として君臨していた1992、93年頃の市場規模とあまり変わりがない。
国内市場の縮小を打開するため、大手のソフトメーカーは海外市場へ積極的に進出している。日本市場の低迷とは裏腹に、高い成長が続く北米や欧州などの海外市場がもたらす恩恵に与ろうとしているのだが、必ずしも日本企業の思惑通りにはなっていない。なぜなら、ソフトウェアの海外総出荷額は2000年から毎年二桁の減少を続けてきているからだ。2000年に2847億円の出荷額を記録して以来、年々その数字は漸減し、2003年にはついに1,993億円にまで落ち込んでしまった。わずか3年で三割も減少してしまったのである。もちろん、出荷額が減少したからと言ってすべてのソフトメーカーが悪影響を受けているわけではない。だが、それでもこの結果は海外での日本企業の好調さを示すものではないだろう。数字から言えば、海外市場での日本企業の立場は徐々に弱いものになってきているのだ。
そのような苦境にある中で、多くのソフトメーカーは自社が保有する“ある資産”に、これまで以上に注目し始めている。その“ある資産”とは「過去に販売したゲームソフト」のことである。
以前から、既発売のゲームソフトがリメイクされて再発売される事はあったが、最近は過去にヒットしたゲームの続編を新たに開発しようとする動きや、供給媒体をゲーム機だけではなく携帯電話などにも広げようとする動きが活発化している。ハドソンがPCエンジン用ゲームソフトとして販売されていた「天外魔境」シリーズの続編を新たに制作すると発表したり、スクウェア・エニックスが同社の看板ソフトである「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」を携帯電話向けに移植したのは、その一例と言えよう。
こうした一連の傾向を象徴しているのが、ファミコンミニの登場であろう。ファミコン20周年を記念して任天堂が、人気のあったファミリーコンピューター用ゲームをゲームボーイアドバンス向けに移植し「ファミコンミニ」シリーズとして発売したが結果は好調で『7月までに計270万本を出荷した』(注1)という。現在はシリーズ第三弾が販売中なのだから「ファミコンミニ」は十分成功したと言える。
任天堂の成功例を見れば、既発売のソフト資産を再び利用することはソフトメーカーにとって決して悪い話ではないように思える。だが、その裏返しとして、わざわざ過去のソフトに注目しなければならないほど、ソフトメーカーを取り巻く環境は厳しいということでもある。今回は、ソフトメーカーが新たな光明を見出そうとしているリメイクソフトについて考えてみる事にしたい。
注1…「Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト」2004年8月23日
参考文献…「週刊東洋経済」 P46 東洋経済新報社 2003年8月30日
同…「CESA プレスリリース」 2004年7月26日
同…「株式会社明響社 2003年9月期 中間決算説明会資料」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2004年9月13日
