当該記事は、2003年5月23日にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「GCのこれから 〜任天堂の試練〜」の第四章(終章)です。
第四章:「課題」
稼働率の良いGCはPS2よりも効率的に利益を確保できる。絶対数が少ないからといって、稼働率が高いGCの戦略が失敗したわけではないのだ。しかし、GCはこのままで良いとは言えない。規模の面ではPS2に大敗、ライバル視していなかったXboxとあまり変わらない程度の普及台数なのだ。
GCに与えられた課題とは、DVD再生機能などのゲーム以外の付加価値をつけることではない。普及台数の増加なのだ。もし、絶対数でPS2と勝負できる程度の台数を確保できれば、“ゲームしかできない”GCだけに高稼働率の恩恵を十二分に得ることができる。
普及台数増加の必要性は任天堂も感じているようだ。同社は早ければ今年にも、GCを中国で販売する計画だと発表している。普及数の拡大がGC成功への条件であるため、未開拓の地域への進出はもちろん、既存地域での拡販は必要である。ただ、それが必ず成功するという保証はない。もちろん無理に拡販を狙って大失敗することもあり得る。将来、飛躍する可能性を秘めながらも、大きなリスクを抱えているのがGCの現状である。
では、任天堂はこのGCを今後どうするべきなのだろう。評価すべき点は稼働率がよい所であり、改善すべき点は普及台数が少ないことである。これらを併せて考えると、任天堂のソフト重視の戦略は失敗ではないことが証明されたと言える。少なくとも効率よくソフトが売れている以上『制度疲労を起こしたビジネスモデルの立て直し』(注8)に迫られているとは思えない。
任天堂の犯したミスは、2002年度にGCがあまりにも急激に普及すると予測してしまったことに集約される。数字を見れば、GCは2001年度の380万台から2002年度は560万台へと、前年度比約47%増の売れ行きを示している。確かに三倍に伸びると予測した数字と比較すれば、47%増は物足りない数字であり、伸び悩みと映るかもしれない。だが、伸び率で言えばPS2に勝っている数字なのである。
2002年度のPS2の出荷台数は約2252万台であり、前年度の約1800万台と比べると25%増の伸びを示しているが、GCには伸び率の点で負けているのだ。PS2を超える伸び率であれば、GCが計画通りに伸びていなくてもそれほど悲観するものではない。ましてや撤退を勧告するべき数字でもない。ならば、任天堂はGCの未来に賭けても良いのではないだろうか。
しかし、現状のままではGCは苦しい。GCに今求められているのは、割高感の払拭だ。任天堂は昨年末のクリスマス商戦に『かつてないソフトラインアップ』(同)で臨んだが、期待したほどハードが伸びなかった。稼働率は良いのであるから、ソフトが悪いとは単純には言えない。では、この現象はなぜ起きたのか。岩田社長は『任天堂として初めて不況の影響を受けた』(注9)ためだとしている。
つまりソフトの質やハードの性能に問題があるわけではなく、不況のためにGCが割高であると思われてしまったことが主たる原因だと考えているようなのだ。では今、任天堂がしなければならないことは割高感の払拭であろう。割高感を解消することが、GCを軌道に乗せるための前提条件である。価格競争を好まない任天堂の“英断”に期待したい。
注8…2003年4月8日 日経産業新聞
注9…2002年12月17日 日経産業新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月23日
2006年07月01日
2006年06月30日
「GCのこれから 〜任天堂の試練〜」Part3(2003.5.16)
第三章:「戦略の成否」
現在、どのハードよりも圧倒的に有利な立場にあるPS2。だが、ハードの稼働率はGCより劣っている。絶対的に優位にあるはずのPS2の稼働率が低い理由は何なのか。理由のひとつとしては『ゲームをしない人向けにゲーム機を売る』(注6)戦略があったためだと思われる。
PS2の優位はDVD再生機能などのゲーム以外の付加価値があったためだという。『ゲームで遊ぶことだけが目的ではない消費者は、DVD再生機能を持つPS2など“つぶしがきくゲーム機”に流れがち』(注7)。一方でGCが劣勢である原因は、こうした付加価値がないためだと捉えられている。『人が昔ほどゲームにエネルギーを割かないのに、ゲームしかできないゲームキューブは不利』(同)、『(単なるゲーム機である)キューブを売る理屈付けが難しい』(同 カッコ内筆者)。
しかし、ゲームビジネスにおける利益の源泉はソフトにあるはずである。一見すると「ゲームをしない人向けにゲーム機を売る」戦略をとったSCEは、PS2の急激な普及によって成功したように見えるが、効率面ではGCに負ける結果となっている。もちろん、その戦略がPS2を急激に普及させた一因になったことは事実であろう。
だが、ゲームビジネスを手掛けている以上、ハードが何千万台売れようが、それに伴ってソフトが売れなければまったく意味がない。ハードで利益を確保するのは難しいからこそ、ゲームソフトを買ってもらえなければ、SCEの利益にならないのだ。
SCEの狙いはゲームをしない人にもゲーム機を買わせて、彼らを新しいゲームユーザーとして取り込むことだろうが、PS2が目の前にあったとして、そこからゲームソフトに興味を持ち、ソフトを買う人間がどれほどいるのだろうか。その証拠に、PS2の稼働率は“ゲームしかできないGC”に負けている。ならば彼らにPS2を売る意味はあるのだろうか。
一方、ハードにゲーム以外の価値を持たせることに何の意味がないと考えた任天堂の戦略の結果が、稼働率の高さとして現れている。普及台数も、参入しているゲームメーカーも、供給するタイトル数も、PS2はGCに勝っているのに、稼働率では負けてしまっているのだ。ここから言えることは、もしGCが将来値下げなどの理由で普及に弾みがつけば、その稼働率の高さを武器にGCがPS2を脅かす存在になるということだ。現時点における普及台数の対比だけで単純にPS2圧勝・GC敗退と決めつけることはできない。
注6…2003年4月8日 日経産業新聞
注7…2002年12月17日 日経産業新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月16日
現在、どのハードよりも圧倒的に有利な立場にあるPS2。だが、ハードの稼働率はGCより劣っている。絶対的に優位にあるはずのPS2の稼働率が低い理由は何なのか。理由のひとつとしては『ゲームをしない人向けにゲーム機を売る』(注6)戦略があったためだと思われる。
PS2の優位はDVD再生機能などのゲーム以外の付加価値があったためだという。『ゲームで遊ぶことだけが目的ではない消費者は、DVD再生機能を持つPS2など“つぶしがきくゲーム機”に流れがち』(注7)。一方でGCが劣勢である原因は、こうした付加価値がないためだと捉えられている。『人が昔ほどゲームにエネルギーを割かないのに、ゲームしかできないゲームキューブは不利』(同)、『(単なるゲーム機である)キューブを売る理屈付けが難しい』(同 カッコ内筆者)。
しかし、ゲームビジネスにおける利益の源泉はソフトにあるはずである。一見すると「ゲームをしない人向けにゲーム機を売る」戦略をとったSCEは、PS2の急激な普及によって成功したように見えるが、効率面ではGCに負ける結果となっている。もちろん、その戦略がPS2を急激に普及させた一因になったことは事実であろう。
だが、ゲームビジネスを手掛けている以上、ハードが何千万台売れようが、それに伴ってソフトが売れなければまったく意味がない。ハードで利益を確保するのは難しいからこそ、ゲームソフトを買ってもらえなければ、SCEの利益にならないのだ。
SCEの狙いはゲームをしない人にもゲーム機を買わせて、彼らを新しいゲームユーザーとして取り込むことだろうが、PS2が目の前にあったとして、そこからゲームソフトに興味を持ち、ソフトを買う人間がどれほどいるのだろうか。その証拠に、PS2の稼働率は“ゲームしかできないGC”に負けている。ならば彼らにPS2を売る意味はあるのだろうか。
一方、ハードにゲーム以外の価値を持たせることに何の意味がないと考えた任天堂の戦略の結果が、稼働率の高さとして現れている。普及台数も、参入しているゲームメーカーも、供給するタイトル数も、PS2はGCに勝っているのに、稼働率では負けてしまっているのだ。ここから言えることは、もしGCが将来値下げなどの理由で普及に弾みがつけば、その稼働率の高さを武器にGCがPS2を脅かす存在になるということだ。現時点における普及台数の対比だけで単純にPS2圧勝・GC敗退と決めつけることはできない。
注6…2003年4月8日 日経産業新聞
注7…2002年12月17日 日経産業新聞
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月16日
2006年06月29日
「GCのこれから 〜任天堂の試練〜」Part2(2003.5.14)
第二章:「販売本数」
ゲーム機を販売している企業にとって、ゲームソフトの売上こそが収益源である。ハードをいくら販売したとしても、それに伴ってゲームソフトが売れなければ、収益には結びつかない。ハードだけで利益を確保してきた企業は存在しないといっても言い過ぎではない。ゲームビジネスで成功するためにはソフトをより多く販売しなければならないのだ。
GCが失敗したと評価される理由のひとつとして、ハードの販売が振るわなかったことが挙げられる。理由はハードの普及が十分でなければ、ソフトが売れないからである。確かにGCのソフト販売本数は計画を達成できなかった。計画に比べて約1000万本も少なかったのは事実である。しかし、GCのソフト出荷本数は計画比約20%減の4450万本に止まっている。当初の計画の半分にも到達しなかったハードの不振と比べると、その減少率はそれほどひどくはない。ハードの普及が計画値を大幅に下回ったのであれば、ソフトもそれに呼応して同様の傾向を示してもおかしくはないが、GCの場合はそうはならなかった。
GCの販売台数は2001年度に380万台、2002年度ではおよそ560万台である。これらを合計すると、GCの累計普及台数は940万台だと予想できる。2002年度に、GC専用ソフトは合計4450万本を販売しているから、GC一台につき、約4.7本のソフトが売れている計算になる。
一方、勝者と呼ばれているPS2はどうだろう。ソニーの決算発表を見てみると、2002年度のソフト販売本数は18990万であると分かる。2001年度のソフト販売本数は12180万本であるから、約56%増で推移している。
同様にハードの普及台数は、2002年度までのPS2の生産台数は2252万台であり、2001年度の1807万台より約24%増で出荷されている。それ以前には1000万台強が出荷されていたのだから、PS2の累計出荷台数は合計すると「約5100万台」程度となる。5000万台を超える普及台数と2億本に迫る勢いのソフトの販売本数。これらの数字からPS2の好調さが伝わるが、GCと同じように一台当たりのソフト販売本数を計算するとPS2の場合、約3.72本でしかないのだ。これはGCの4.7本を大きく下回る。
一台当たりの販売本数を見れば、GCはPS2に負けていない。これをハードの稼働率と規定すると、絶対数で見れば普及台数やソフトの販売本数で敗者であるはずのGCが優位に立っている。こうした事実を考慮すれば、GCは失敗している、だから縮小もしくは撤退も考えなければならないとは一概に言えないだろう。売れていないと思われているのは、任天堂が自らに課したハードルが高すぎたためであるし、累計普及台数5000万台を誇るPS2と単純比較されてしまうためである。
失敗したのは、実は任天堂の計画でしかないのだ。GCは『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注5)との考えが早計だっただけなのだ。GC自体の稼働率はPS2と遜色がないほど好調なのだから。
注5…前出
参考文献…「ソニー平成14年度半期報告書」「ソニー平成14年度報告書」
「ソニーグループ2001年度中間報告書・2001年度報告書・2002年
度中間報告書」「ソニー プレスリリース」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月14日
ゲーム機を販売している企業にとって、ゲームソフトの売上こそが収益源である。ハードをいくら販売したとしても、それに伴ってゲームソフトが売れなければ、収益には結びつかない。ハードだけで利益を確保してきた企業は存在しないといっても言い過ぎではない。ゲームビジネスで成功するためにはソフトをより多く販売しなければならないのだ。
GCが失敗したと評価される理由のひとつとして、ハードの販売が振るわなかったことが挙げられる。理由はハードの普及が十分でなければ、ソフトが売れないからである。確かにGCのソフト販売本数は計画を達成できなかった。計画に比べて約1000万本も少なかったのは事実である。しかし、GCのソフト出荷本数は計画比約20%減の4450万本に止まっている。当初の計画の半分にも到達しなかったハードの不振と比べると、その減少率はそれほどひどくはない。ハードの普及が計画値を大幅に下回ったのであれば、ソフトもそれに呼応して同様の傾向を示してもおかしくはないが、GCの場合はそうはならなかった。
GCの販売台数は2001年度に380万台、2002年度ではおよそ560万台である。これらを合計すると、GCの累計普及台数は940万台だと予想できる。2002年度に、GC専用ソフトは合計4450万本を販売しているから、GC一台につき、約4.7本のソフトが売れている計算になる。
一方、勝者と呼ばれているPS2はどうだろう。ソニーの決算発表を見てみると、2002年度のソフト販売本数は18990万であると分かる。2001年度のソフト販売本数は12180万本であるから、約56%増で推移している。
同様にハードの普及台数は、2002年度までのPS2の生産台数は2252万台であり、2001年度の1807万台より約24%増で出荷されている。それ以前には1000万台強が出荷されていたのだから、PS2の累計出荷台数は合計すると「約5100万台」程度となる。5000万台を超える普及台数と2億本に迫る勢いのソフトの販売本数。これらの数字からPS2の好調さが伝わるが、GCと同じように一台当たりのソフト販売本数を計算するとPS2の場合、約3.72本でしかないのだ。これはGCの4.7本を大きく下回る。
一台当たりの販売本数を見れば、GCはPS2に負けていない。これをハードの稼働率と規定すると、絶対数で見れば普及台数やソフトの販売本数で敗者であるはずのGCが優位に立っている。こうした事実を考慮すれば、GCは失敗している、だから縮小もしくは撤退も考えなければならないとは一概に言えないだろう。売れていないと思われているのは、任天堂が自らに課したハードルが高すぎたためであるし、累計普及台数5000万台を誇るPS2と単純比較されてしまうためである。
失敗したのは、実は任天堂の計画でしかないのだ。GCは『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注5)との考えが早計だっただけなのだ。GC自体の稼働率はPS2と遜色がないほど好調なのだから。
注5…前出
参考文献…「ソニー平成14年度半期報告書」「ソニー平成14年度報告書」
「ソニーグループ2001年度中間報告書・2001年度報告書・2002年
度中間報告書」「ソニー プレスリリース」
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月14日
2006年06月28日
「GCのこれから 〜任天堂の試練〜」Part1(2003.5.8)
第一章:「不振」
何もないところから、巨大なゲーム市場を作り上げた任天堂。90年代の不況の中でも、日本を代表する巨大企業を凌ぐほどの高収益を上げ続けてきたその任天堂が、いま苦況に立たされている。原因は、満を持して発売した家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」(GC)の不振だ。SCEのプレイステーション(PS)シリーズ優勢の現状をGCで挽回しようとした同社の試みは、青写真通りにはなっていない。
昨年、任天堂は『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注1)であるとの見方を示し、GCの販売台数を大きく増やす計画を立てた。2001年度の380万台から、2002年度はその約三倍強の1200万台を販売すると目論んだが、結果は見事に外れてしまった。実際の販売台数はその半分以下である560万台しか売ることができなかったのだ。ハードが売れなければ、当然の事ながらゲームソフトの販売本数も減る。GC用のゲームソフトは計画比マイナス1000万本の約4450万本の販売に止まり、任天堂の収益を圧迫した。任天堂の最終利益は、GCの販売不振や為替の影響もあり、前期比約40%も減少した。
そんな中、ゲームボーイアドバンス(GBA)は好調に推移している。すでに累計3300万台が売れ、携帯ゲーム市場ではほぼ独占体制を築いている。バンダイがこれまで力を入れてきた携帯ゲーム機「ワンダースワン」の新型機開発を中止し、事実上撤退を宣言したのは、任天堂の牙城を崩すのは無理と判断したからに他ならない。世界最大手の携帯電話メーカーであるフィンランドのノキアが、ゲーム機能を重視した携帯電話を売り出すと発表した際には、GBAのライバルが登場したと騒がれたが、当のノキアは『競合するのではなく、異なる層を狙う』(注2)と述べており、GBAとの競合は考えていないようだ。それだけGBAが強いということなのだろう。
『ゲームキューブの販売不振が今期以降の業績に影響する懸念がある。好調なゲームボーイに力を入れ、キューブ事業を縮小するなどの対応が必要』(注3)。ゲームキューブが全体の足を引っ張っているのだから、これを縮小し、GBAに特化すべきとの声は多い。もしくは、ゲームキューブが販売不振なのであるから、自然と任天堂は携帯ゲーム事業に集中せざるをえないだろう、との予想もある。
では、任天堂はゲームキューブ事業を一体どうするべきなのだろう。潔く負けを認め、ゲームキューブからの撤退、もしくは大胆な縮小路線を選択するのがよいのであろうか。それとも、周りの評価など気にせずに、あくまでゲームキューブの拡販に努めるべきなのだろうか。現在のゲーム市場は『ハードの売り上げは落ち着き、ソフトが売れるようになる“回収期”に入った』(注4)と言われている。もし、そうであるならば任天堂に残されたゲームキューブ拡販の機会はかなり少ないと言えよう。任天堂は世に送り出して間もないゲームキューブを、再評価しなくてはならない時期にきているのだ。今回は、GCのこれからを考えてみることにしたい。
注1…2003年4月8日 日経産業新聞 カッコ内筆者
注2…2003年3月9日 日経産業新聞
注3…2003年4月8日 日経金融新聞
注4…Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月8日
何もないところから、巨大なゲーム市場を作り上げた任天堂。90年代の不況の中でも、日本を代表する巨大企業を凌ぐほどの高収益を上げ続けてきたその任天堂が、いま苦況に立たされている。原因は、満を持して発売した家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」(GC)の不振だ。SCEのプレイステーション(PS)シリーズ優勢の現状をGCで挽回しようとした同社の試みは、青写真通りにはなっていない。
昨年、任天堂は『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注1)であるとの見方を示し、GCの販売台数を大きく増やす計画を立てた。2001年度の380万台から、2002年度はその約三倍強の1200万台を販売すると目論んだが、結果は見事に外れてしまった。実際の販売台数はその半分以下である560万台しか売ることができなかったのだ。ハードが売れなければ、当然の事ながらゲームソフトの販売本数も減る。GC用のゲームソフトは計画比マイナス1000万本の約4450万本の販売に止まり、任天堂の収益を圧迫した。任天堂の最終利益は、GCの販売不振や為替の影響もあり、前期比約40%も減少した。
そんな中、ゲームボーイアドバンス(GBA)は好調に推移している。すでに累計3300万台が売れ、携帯ゲーム市場ではほぼ独占体制を築いている。バンダイがこれまで力を入れてきた携帯ゲーム機「ワンダースワン」の新型機開発を中止し、事実上撤退を宣言したのは、任天堂の牙城を崩すのは無理と判断したからに他ならない。世界最大手の携帯電話メーカーであるフィンランドのノキアが、ゲーム機能を重視した携帯電話を売り出すと発表した際には、GBAのライバルが登場したと騒がれたが、当のノキアは『競合するのではなく、異なる層を狙う』(注2)と述べており、GBAとの競合は考えていないようだ。それだけGBAが強いということなのだろう。
『ゲームキューブの販売不振が今期以降の業績に影響する懸念がある。好調なゲームボーイに力を入れ、キューブ事業を縮小するなどの対応が必要』(注3)。ゲームキューブが全体の足を引っ張っているのだから、これを縮小し、GBAに特化すべきとの声は多い。もしくは、ゲームキューブが販売不振なのであるから、自然と任天堂は携帯ゲーム事業に集中せざるをえないだろう、との予想もある。
では、任天堂はゲームキューブ事業を一体どうするべきなのだろう。潔く負けを認め、ゲームキューブからの撤退、もしくは大胆な縮小路線を選択するのがよいのであろうか。それとも、周りの評価など気にせずに、あくまでゲームキューブの拡販に努めるべきなのだろうか。現在のゲーム市場は『ハードの売り上げは落ち着き、ソフトが売れるようになる“回収期”に入った』(注4)と言われている。もし、そうであるならば任天堂に残されたゲームキューブ拡販の機会はかなり少ないと言えよう。任天堂は世に送り出して間もないゲームキューブを、再評価しなくてはならない時期にきているのだ。今回は、GCのこれからを考えてみることにしたい。
注1…2003年4月8日 日経産業新聞 カッコ内筆者
注2…2003年3月9日 日経産業新聞
注3…2003年4月8日 日経金融新聞
注4…Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2003年5月8日
