当該記事は、2002年11月6日にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「豪語する人々〜その訳は〜」の第四章(最終章)です。
ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第四章:「個人的性格」
ゲーム業界に属する企業のトップ同士が激しい舌戦を繰り広げることは良くある。しかしながら実際は、誰もが自分の所の製品が一番優れていて他社製品に劣るわけがない、と言い合うだけであるから、舌戦と表現するよりただの「口喧嘩」と言った方が良いのかもしれない。それでも、彼らが豪語し、舌戦を仕掛けるのはそれに見合うだけの価値と意味があるからなのだ。
ただ、それ以外に理由がないか、と問われればない訳ではない。トップ達が大言を吐く理由を他に求めるとするならば、最後に性格上の原因があろう。つまり、彼らが大口であるのは、単なる性格的なものであると推測することもできるのだ。それを証明するのは難しいことでもあるが、否定するだけの根拠もない。豪語する理由のひとつとしての可能性はあると言えるだろう。
もし、性格が主たる原因だとするのであれば、今後のトップ同士の舌戦が起きることは少なくなるかもしれない。なぜなら、これまで舌戦の主役であり、企業のトップとして活躍してきた人達が次々と引退しているからだ。セガの中山氏はかなり前に社長職から退いているし、任天堂の山内氏も今年引退を決意し、任天堂は山内氏のワンマン経営から集団指導体制に移行している。
こうした流れは止め様も無く、その他でもナムコの中村氏、エニックスの福島氏なども社長の立場から退いている。確かに、人はどうしても年をとるものであるから、トップと言えども引退するのは自然の成り行きではある。仕方のないと言ってしまえばそのとおりであるが、彼らの大口が個人的な性格に由来しているのであれば、この事態は舌戦の消滅を意味することになろう。
なぜなら、次なるトップ達が必ずしも強烈な個性の持ち主だとは限らないからだ。おとなしい人物がこれからトップになることも充分に考えられる。その時、これまで通り激しい舌戦が繰り広げられるだろうか。大口を叩くのがもし個人的な性格が主な原因であれば、残念だがそれは難しいと思われる。
傍から聞いているユーザーにとって、トップ達の舌戦は面白いものだった。ゲーム業界全体を盛り上げる一種のスパイスのようなものであったと言っても良いだろう。だが、そのスパイスがトップ達の引退によって消えてしまう可能性が出てきている。
インタビューを行った人間から『“勝てば官軍”の進軍ラッパ』(注12)とも評された山内氏のような強烈な個性を持った人物が再び現れるのか。山内氏並みの心地よい進軍ラッパを吹ける人物がこれから登場することを切に期待している。 (おわり)
注12…「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」 P354 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年11月6日
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2006年07月24日
2006年07月23日
「豪語する人々〜その訳は〜」Part3(2002.10.29)
当該記事は、2002年10月29日にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「豪語する人々〜その訳は〜」の第三章です。
ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第三章:「対象者」
ゲーム業界のトップ達が大言を吐く理由はトップにいる人間として『一寸先は闇』であるゲーム業界の未来を明るく描き出す必要に迫られていたからだと言うことができる。
描き出した未来は、公言してこそ価値があるのだから、彼らは自らの予想した明るい未来を口にしなければならなかったのである。だが、トップ達のこの言葉は誰に向けてのものなのか。
まず考えられるのがライバルに向けてであろう。彼らの言葉の応酬は舌戦に見えるのだから、相手に向ってものを言っていると思うのは当然だ。だが、ライバルは言葉ぐらいではへこたれるわけがない。
なぜなら、彼らに最もダメージを与えられるのは「言葉」ではなく、販売実績などの「数字」だからだ。ライバル社のトップが口にした夢物語ぐらいで、自らの描き出した未来を不安視するとは到底考えられない。それでは、トップ達の言葉は一体誰に向って言われたのだろうか。大口はトップの役目である以上は身内の人間、つまり社内全体に向けてのものだと考えられる。
会社を運営していくためには、自社の方向性や将来像を明快に打ちだしていかなければならない。CSKやセガの元社長である故大川功氏は生前、会社を引っ張っていくためにはビジョンが必須のものであると主張していた。
『会社は、感動の歴史や。ビジョンを持って、経営をしていかなくてはいけない。ビジョンがないと、しょせんは日々の目の前のことに流されてしまう。…人の集団をつなぎとめておくのは、ビジョンしかない』(P168 「ゲーム戦争」 著大下英治 光文社文庫 1996)。明るい未来を描き、それを口にするという行為は、別な言い方をすればビジョンを語ることでもある。
大川氏の考え方がゲーム業界でも通じるとするならば、トップがビジョンを語るのは社内をまとめるためだと言うことができる。ゲームビジネスという不透明な環境下で巨大化しつつあるゲーム制作集団をつなぎとめるためには、少々夢見がちな発言ぐらいがちょうど良いのではないだろうか。
身内の人間以外に対象者を挙げるとすれば、あとはゲームユーザーが考えられる。それは、自社の製品がユーザーにもたらすであろう面白さと明るい未来が、如何に他社のより優れているかを言葉で訴えれば、彼らの支持を得られるかもしれないからだ。
実際にそれで支持が得られるかどうかは分からないが、ユーザーに語りかけることはできている。単なる宣伝の効果しかなかったとしても、言葉一つで費用をかけずに宣伝ができているのだから、大口の効果はあると言えるだろう。
一見すると、トップ同士が激しい舌戦を繰り広げているように見えるが、実は彼らは相手の方などまったく見ていないのである。
(つづく)
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月29日
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ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第三章:「対象者」
ゲーム業界のトップ達が大言を吐く理由はトップにいる人間として『一寸先は闇』であるゲーム業界の未来を明るく描き出す必要に迫られていたからだと言うことができる。
描き出した未来は、公言してこそ価値があるのだから、彼らは自らの予想した明るい未来を口にしなければならなかったのである。だが、トップ達のこの言葉は誰に向けてのものなのか。
まず考えられるのがライバルに向けてであろう。彼らの言葉の応酬は舌戦に見えるのだから、相手に向ってものを言っていると思うのは当然だ。だが、ライバルは言葉ぐらいではへこたれるわけがない。
なぜなら、彼らに最もダメージを与えられるのは「言葉」ではなく、販売実績などの「数字」だからだ。ライバル社のトップが口にした夢物語ぐらいで、自らの描き出した未来を不安視するとは到底考えられない。それでは、トップ達の言葉は一体誰に向って言われたのだろうか。大口はトップの役目である以上は身内の人間、つまり社内全体に向けてのものだと考えられる。
会社を運営していくためには、自社の方向性や将来像を明快に打ちだしていかなければならない。CSKやセガの元社長である故大川功氏は生前、会社を引っ張っていくためにはビジョンが必須のものであると主張していた。
『会社は、感動の歴史や。ビジョンを持って、経営をしていかなくてはいけない。ビジョンがないと、しょせんは日々の目の前のことに流されてしまう。…人の集団をつなぎとめておくのは、ビジョンしかない』(P168 「ゲーム戦争」 著大下英治 光文社文庫 1996)。明るい未来を描き、それを口にするという行為は、別な言い方をすればビジョンを語ることでもある。
大川氏の考え方がゲーム業界でも通じるとするならば、トップがビジョンを語るのは社内をまとめるためだと言うことができる。ゲームビジネスという不透明な環境下で巨大化しつつあるゲーム制作集団をつなぎとめるためには、少々夢見がちな発言ぐらいがちょうど良いのではないだろうか。
身内の人間以外に対象者を挙げるとすれば、あとはゲームユーザーが考えられる。それは、自社の製品がユーザーにもたらすであろう面白さと明るい未来が、如何に他社のより優れているかを言葉で訴えれば、彼らの支持を得られるかもしれないからだ。
実際にそれで支持が得られるかどうかは分からないが、ユーザーに語りかけることはできている。単なる宣伝の効果しかなかったとしても、言葉一つで費用をかけずに宣伝ができているのだから、大口の効果はあると言えるだろう。
一見すると、トップ同士が激しい舌戦を繰り広げているように見えるが、実は彼らは相手の方などまったく見ていないのである。
(つづく)
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月29日
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2006年07月22日
「豪語する人々〜その訳は〜」Part2(2002.10.22)
当該記事は、2002年10月22日にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「豪語する人々〜その訳は〜」の第二章です。
ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第二章:「大口の理由」
『3DOの技術をもっていないあなた方は、どうやって3DOに対抗するつもりなんですか。3DOのような高い性能と、おもちゃ市場の範囲を超えるような価格水準の製品を扱ったこともないあなた方が、どうやって成功するつもりなんですか』(注9 3DOロバート副社長)。
90年代の半ばにマルチメディア時代の到来だと騒がれ、家電メーカーなどが新しいゲーム機を引っ下げて、ゲーム業界に新規参入した時期があった。その際、マスコミに大きく取り上げられ、任天堂に勝利するかもしれないと言われたことがあったのがこの『3DO』だ。
ロバート氏の言葉はその時、任天堂やセガなどに向けたものである。一方、任天堂の山内氏は相変わらず『あれは、九九・九九%駄目だ』(注10)だと息巻いていたのは、今と変わらない。
だが、任天堂やセガなどの“ゲーム業界の古株”ではない新規参入組でさえこうした強気の主張をするのは、やはり業界内ではそうしなければならないルールのようなものがあるからではないか。何かインパクトのある物言いをしなければ、ゲーム業界では通用しないのではないだろうか。
その疑問を解くためには、強気発言の多くが“未来”の自分もしくは相手を判断している内容であることに注目する必要がある。ここで取り上げた3DOに関しての発言も、同機の行く末を非常に肯定的に捉えたものと、否定的に捉えたものとの2つに分けられるが、すべて3DOの未来の姿を予測したものである。
しかも、自らに都合が良いように、である。自分に都合が良い未来を予想する発言をすれば、世間からは強気だと捉えられるだろう。では、彼らはなぜそう言った発言をするのだろうか。
予想や予測が自らに都合良いものになる理由。それは、ゲームビジネスが『一寸先は闇』の世界であることが関係している。『この分野は、消費者に面白くないといわれてしまえば、それで終わり。しかもいつそういわれるか、だれにも予測できない』(注11)と山内氏も言うように、ゲーム業界の未来を予測するのは誰であっても、とても困難なのだ。
だからと言って、企業のトップが業界の未来を見通せないようでは困る。しかも、見通せたとしても、展望の開けない未来しか見れないのであれば、意味が無い。意味のある予想・予測とは「自分達にとって明るい未来」のはずである。企業のトップとしてこうした未来を描きださなければならない必要があるのだ。そして、描き出した未来は公にしてこそ、つまり口にしてこそ価値が生まれる。
ここに、ゲーム業界のトップ達が豪語する理由が見えてくる。つまり、彼らはトップの役割を忠実に果たしていただけなのだ。何も好き好んで自らの反感を買うような発言をしているわけではない。自らの繁栄を予測しなければならない立場にあるトップとして、わかりやすい言葉で自分の『予想した未来』を伝えようとしただけなのだ。結果として、それが大言を吐いていると捉えられているだけなのである。大口は「トップの役目のひとつ」なのだ。
では、その予想した未来を聞かせる相手は誰なのだろう。(つづく)
注9…「セガvs.任天堂 新市場で勝つのはどっちだ!?」P43 著国友隆一 こう書房 1994
注10…「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」P263 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997
注11…「セガvs.任天堂」P68 著赤木哲平 JMAM 1992
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月22日
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ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第二章:「大口の理由」
『3DOの技術をもっていないあなた方は、どうやって3DOに対抗するつもりなんですか。3DOのような高い性能と、おもちゃ市場の範囲を超えるような価格水準の製品を扱ったこともないあなた方が、どうやって成功するつもりなんですか』(注9 3DOロバート副社長)。
90年代の半ばにマルチメディア時代の到来だと騒がれ、家電メーカーなどが新しいゲーム機を引っ下げて、ゲーム業界に新規参入した時期があった。その際、マスコミに大きく取り上げられ、任天堂に勝利するかもしれないと言われたことがあったのがこの『3DO』だ。
ロバート氏の言葉はその時、任天堂やセガなどに向けたものである。一方、任天堂の山内氏は相変わらず『あれは、九九・九九%駄目だ』(注10)だと息巻いていたのは、今と変わらない。
だが、任天堂やセガなどの“ゲーム業界の古株”ではない新規参入組でさえこうした強気の主張をするのは、やはり業界内ではそうしなければならないルールのようなものがあるからではないか。何かインパクトのある物言いをしなければ、ゲーム業界では通用しないのではないだろうか。
その疑問を解くためには、強気発言の多くが“未来”の自分もしくは相手を判断している内容であることに注目する必要がある。ここで取り上げた3DOに関しての発言も、同機の行く末を非常に肯定的に捉えたものと、否定的に捉えたものとの2つに分けられるが、すべて3DOの未来の姿を予測したものである。
しかも、自らに都合が良いように、である。自分に都合が良い未来を予想する発言をすれば、世間からは強気だと捉えられるだろう。では、彼らはなぜそう言った発言をするのだろうか。
予想や予測が自らに都合良いものになる理由。それは、ゲームビジネスが『一寸先は闇』の世界であることが関係している。『この分野は、消費者に面白くないといわれてしまえば、それで終わり。しかもいつそういわれるか、だれにも予測できない』(注11)と山内氏も言うように、ゲーム業界の未来を予測するのは誰であっても、とても困難なのだ。
だからと言って、企業のトップが業界の未来を見通せないようでは困る。しかも、見通せたとしても、展望の開けない未来しか見れないのであれば、意味が無い。意味のある予想・予測とは「自分達にとって明るい未来」のはずである。企業のトップとしてこうした未来を描きださなければならない必要があるのだ。そして、描き出した未来は公にしてこそ、つまり口にしてこそ価値が生まれる。
ここに、ゲーム業界のトップ達が豪語する理由が見えてくる。つまり、彼らはトップの役割を忠実に果たしていただけなのだ。何も好き好んで自らの反感を買うような発言をしているわけではない。自らの繁栄を予測しなければならない立場にあるトップとして、わかりやすい言葉で自分の『予想した未来』を伝えようとしただけなのだ。結果として、それが大言を吐いていると捉えられているだけなのである。大口は「トップの役目のひとつ」なのだ。
では、その予想した未来を聞かせる相手は誰なのだろう。(つづく)
注9…「セガvs.任天堂 新市場で勝つのはどっちだ!?」P43 著国友隆一 こう書房 1994
注10…「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」P263 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997
注11…「セガvs.任天堂」P68 著赤木哲平 JMAM 1992
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月22日
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☆【当該記事への評価をする】
2006年07月21日
「豪語する人々〜その訳は〜」Part1(2002.10.15)
当該記事は、2002年10月15日にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「豪語する人々〜その訳は〜」の第一章です。
ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第一章:「強気すぎる発言」
『Xboxは売れない』(任天堂山内前社長 注1)。『ゲーム機戦争は終わった』(SCEA平井社長 注2)。『マイクロソフトの辞書に敗北の文字は無い』(MS大浦常務 注3)。独走態勢に入っているPS2(プレイステーション2)を追いかけるGC(ゲームキューブ)とXbox。数字を見る限りでは対決ムードは無いに等しいが、言葉の上では熱い戦いが繰り広げられている。
舌鋒するどく、相手をけん制する言葉の数々は、なんとも威勢のいいものばかりである。ライバルを酷評するもの、自らの勝利を宣言するもの、自分達の負けはありえないと言うもの、発言内容は多岐にわたるが、それぞれに強気な発言である。基本的に、ゲーム業界にいる人間、特にハードを供給している企業のトップからは強気な発言を良く聞く。
その最たる人物が、強気な発言で鳴らしていた任天堂の山内前社長であろう。彼が発してきた言葉の数々には、名言・至言も多く含まれているが、その多彩な発言のせいで数多くの人間から色々な評価をもらっている。一例を挙げるとこのようになる。
『こんなに頭ごなしにガミガミ苦情を言う人も珍しい。…よほどの自信家に違いない』(「新・電子立国第四巻」 注4)。『反感を買う人』(「ゲームの大学」 注5)。『きわめて個性的な経営者』(「セガvs.任天堂」 注6)。『冷厳な目差し、薄い唇、顔は笑っても目の奥は笑っていない。表情はほとんど変わらない。神経は繊細で、感情は薄く少ない』(「セガvs.任天堂」 注7)などなど。
これだけの評価を他人から受けているのは、彼の発する言葉が非常にはっきりしているからであろう。切れ味が鋭くとも、必ずしも皆に好まれる発言をしてきていないことがこの評価に繋がったと思われる。
だが、彼ほどではなくても、ゲーム業界のトップにいる人達の発言はいつも歯切れの良いものが多い。セガの中興の祖であり元社長であった中山氏も『山内さんはアミューズメント・ビジネスというものが全然わかっていない』(注8)といった厳しい批判を平気でしている。
しかし、ここで疑問が生じる。どうして彼らはここまできびしい物言いをするのか、という疑問だ。普通に考えれば何も、そこまで言わなくても良いのではないかと思える。ものには言い方があるだろうし、あまり手厳しい表現は好まれるものではないのだから、発言の代償として敵を作るだけの結果にもなりかねない。
確かに、第三者の立場から聞けば、トップ同士の舌戦はこの上なく面白い。だが、彼らも第三者を楽しませるために言葉を発しているわけではないはずだ。では、あえてこうした表現を続けるのはなぜなのか。何か訳でもあるのだろうか。あるとすれば、どういったことが原因なのか。
「明確な理由も無いままに、厳しい批判を続けるわけが無い」。この仮定を基に、その訳に迫ってみることにしたい。 (つづく)
注1…(Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト 「“Xboxは売れない” 任天堂社長、山内溥さん」 2002年1月17日)
注2…日本経済新聞 2002年6月7日
注3…Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト 2002年7月3日
注4…「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」 P263 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997
注5…「ゲームの大学」P326 著平林久和・赤尾晃一 メディアファクトリー 1996
注6…「セガvs.任天堂」P206 著赤木哲平 JMAM 1992
注7、8…「セガvs.任天堂 新市場で勝つのはどっちだ!?」P47・P28 著・国友隆一 こう書房 1994
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月15日
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ゲーム業界には任天堂前社長の山内氏のように非常に個性ある発言をする方が多く見受けられます。このコラムでは、なぜそういった発言が出てくるのか? ということを考察しております。彼らの強気発言の裏には一体、何があるのでしょうか。
第一章:「強気すぎる発言」
『Xboxは売れない』(任天堂山内前社長 注1)。『ゲーム機戦争は終わった』(SCEA平井社長 注2)。『マイクロソフトの辞書に敗北の文字は無い』(MS大浦常務 注3)。独走態勢に入っているPS2(プレイステーション2)を追いかけるGC(ゲームキューブ)とXbox。数字を見る限りでは対決ムードは無いに等しいが、言葉の上では熱い戦いが繰り広げられている。
舌鋒するどく、相手をけん制する言葉の数々は、なんとも威勢のいいものばかりである。ライバルを酷評するもの、自らの勝利を宣言するもの、自分達の負けはありえないと言うもの、発言内容は多岐にわたるが、それぞれに強気な発言である。基本的に、ゲーム業界にいる人間、特にハードを供給している企業のトップからは強気な発言を良く聞く。
その最たる人物が、強気な発言で鳴らしていた任天堂の山内前社長であろう。彼が発してきた言葉の数々には、名言・至言も多く含まれているが、その多彩な発言のせいで数多くの人間から色々な評価をもらっている。一例を挙げるとこのようになる。
『こんなに頭ごなしにガミガミ苦情を言う人も珍しい。…よほどの自信家に違いない』(「新・電子立国第四巻」 注4)。『反感を買う人』(「ゲームの大学」 注5)。『きわめて個性的な経営者』(「セガvs.任天堂」 注6)。『冷厳な目差し、薄い唇、顔は笑っても目の奥は笑っていない。表情はほとんど変わらない。神経は繊細で、感情は薄く少ない』(「セガvs.任天堂」 注7)などなど。
これだけの評価を他人から受けているのは、彼の発する言葉が非常にはっきりしているからであろう。切れ味が鋭くとも、必ずしも皆に好まれる発言をしてきていないことがこの評価に繋がったと思われる。
だが、彼ほどではなくても、ゲーム業界のトップにいる人達の発言はいつも歯切れの良いものが多い。セガの中興の祖であり元社長であった中山氏も『山内さんはアミューズメント・ビジネスというものが全然わかっていない』(注8)といった厳しい批判を平気でしている。
しかし、ここで疑問が生じる。どうして彼らはここまできびしい物言いをするのか、という疑問だ。普通に考えれば何も、そこまで言わなくても良いのではないかと思える。ものには言い方があるだろうし、あまり手厳しい表現は好まれるものではないのだから、発言の代償として敵を作るだけの結果にもなりかねない。
確かに、第三者の立場から聞けば、トップ同士の舌戦はこの上なく面白い。だが、彼らも第三者を楽しませるために言葉を発しているわけではないはずだ。では、あえてこうした表現を続けるのはなぜなのか。何か訳でもあるのだろうか。あるとすれば、どういったことが原因なのか。
「明確な理由も無いままに、厳しい批判を続けるわけが無い」。この仮定を基に、その訳に迫ってみることにしたい。 (つづく)
注1…(Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト 「“Xboxは売れない” 任天堂社長、山内溥さん」 2002年1月17日)
注2…日本経済新聞 2002年6月7日
注3…Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト 2002年7月3日
注4…「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」 P263 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997
注5…「ゲームの大学」P326 著平林久和・赤尾晃一 メディアファクトリー 1996
注6…「セガvs.任天堂」P206 著赤木哲平 JMAM 1992
注7、8…「セガvs.任天堂 新市場で勝つのはどっちだ!?」P47・P28 著・国友隆一 こう書房 1994
初出:メールマガジン「ゲームいろいろ情報」2002年10月15日
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