2007年08月03日

過去のコラム編集:2002年6月「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」Part4

当該のゲーム業界記事は、2002年6月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」の第四章(最終章)です。

2002年の記事ですので、かなり古い記述になっておりますが、文章の保存を
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第四章(最終章):「避けられない戦い」


『過去、最も厳しい決算だった』(2002年6月6日日本経済新聞)。ソニーの徳中副社長は前期、2002年3月期を振り返ってこう語ったという。ソニーの中核事業、エレクトロニクス部門が赤字に陥ったことを受けての発言だが、なんとか黒字を維持したのはゲーム部門が大幅な利益を稼いだからだ。


しかし、いくら好調なゲーム部門であっても、その内部では相当な焦りを感じているようだ。それは、ゲーム機戦争を早めに終わらすことで、ゲームなどのコンテンツを事業の軸にしたソニーグループの未来像を安泰なものしなければならないからだ。平井氏による「ゲーム機戦争終結宣言」はそれを証明しているのだろう。


そのための第一歩としてPS2の値下げを敢行したが、逆に価格競争を引き起こしてしまい他社のハードの普及を促すという結果に終わってしまった。価格面での勝負は、ソニーにとって裏目に出てしまったのだ。結局、ゲーム機戦争は言葉と価格以外のもので決着をつけるしかない。そのひとつとして、オンラインゲーム市場での勝負がある。


現在は、オンラインゲーム市場でのPS2の位置は限りなく他のハードと同じレベルにあるが、もし同市場で優位な立場に立てば、Xboxとの競争には勝てるだろう。なぜなら、Xboxの一番の強みはオンライン機能が備わっている所だからだ。その強みを挫くことができればPS2の魅力にXboxは適わない


だが、勝敗はそんなに簡単に決しないだろう。マイクロソフトは勝つまでゲーム機戦争をやる気なのだ。マイクロソフトの本気の具合は、今後五年間に20億ドル (約2500億円)を投入すると発表していることでも分かる。本気になったマイクロソフトはソニーにとって手強い相手になるはずだ。


同じくGCを抱える任天堂との勝負も容易に決まるわけがない。任天堂は低年齢層に根強いファンを持っている。そのため、勝負をするのはオンラインゲーム市場以外のもの、はっきり言えばソフトの質と量で戦わなければならない。


だが、彼らに受けるゲームを作るのは任天堂の方が一枚上手だ。だからこそ、PS1の時代でも彼らを切崩せなかったのだ。任天堂が2002年3月期に過去最高の利益を挙げたのは、そんな老舗の底力を見せつけたと言える。PS2で圧倒的優位に立つソニーグループの決算が悪く、逆に追いかける立場の任天堂が過去最高の決算を出しているのだから、何とも皮肉な話だ。


結局、平井発言によってゲーム機戦争が終わることは無いだろう。逆に、まだまだ続く可能性が非常に高い。勝利宣言程度では、他社はびくともしないのだ。反対に、ソニーグループの焦りが感じられた、身内からの勝利宣言ではなかっただろうか。(おわり)
タグ:ゲーム業界

2007年08月02日

過去のコラム編集:2002年6月「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」Part3

当該のゲーム業界記事は、2002年6月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」の第三章です。

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第三章:「空回り」


ソニーグループの成長戦略にゲームなどのコンテンツ事業は欠かせない。ならば、SCEはゲーム機戦争で負けることは絶対に許されないはずだ。しかし、勝利宣言をした所でライバルである任天堂やマイクロソフトは市場から撤退してくれるわけではない。常にSCEの寝首を掻こうと手ぐすねを引いて待っているのだ。


特にマイクロソフトなどは、平井発言には『一番になるまでやめない』(2002年6月12日日本経済新聞)と反発しつつ、同時にオンライン接続の概要を発表してPS2への対抗心を一層燃やしている。ソニーへの反発は、任天堂も同様だ。


明確な勝利を欲しているソニーにとって、“勝利宣言”は勝ちを確定させる絶好の機会であった。だが、勝ったと宣言するだけでは駄目だ。当然、PS2を勝たせるためのそれなりの施策が必要だ。そのひとつが本体価格の値下げであろう。


ソニーはPS2の本体価格をこれまで段階的に引き下げてきたが、おおよその予想通りに下がってきている。ソシエテ・ジェネラル証券のレポート(注1)には、PS2の本体価格は2000年から2003年までに、39800円 (2000年)、35643円(2001年)、28500円(2002年)、24000円(2003年)と徐々に引き下げられると記載されていた。実際の価格もこの予測とさほど変わらずに値を下げてきている。現在では、およそ28000円程度であるから、この予測通りだと来年までにはもう一段の値下げ攻勢があると見て間違い無いだろう。


しかし、今年五月にSCEがPS2の価格を引き下げた際には、マイクロソフトや任天堂はそれに対抗するべく、Xboxと GCの価格の値下げを行っている。さらに、値下げ効果が両ハードの普及速度を早めたと言うのだから、ソニーにとっては皮肉な結果になった。ソニーはできるだけ早くにゲーム機戦争を終わらせるべく、値下げを敢行したのに、それが逆に激しい戦争の口火を切ることになっては身も蓋も無い。


将来、PS2のもう一段の値下げがあるとしても、今年の五月に起きた現象と同じ結果が表れる可能性が高い。それだけに値段だけの競争ではどうしても限界がある。今のところソニーの試みは空回りしているようだ。(つづく)


(注1・・・「ソシエテ ジェネラル証券 レポート ソニー(6758)」 2001年5月1日)


→第四章(最終章):「避けられない戦い」へ続く
タグ:ゲーム業界

2007年08月01日

過去のコラム編集:2002年6月「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」Part2

当該記事は、2002年6月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」の第二章です。

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第二章:「ソニーのあせり」

 
ソニーグループの2002年3月期の決算は思わしくない結果に終わった。売上こそ微増になったが、本業の儲けを示す営業利益は大幅に減少した。ソニーが不振に陥った主因は、売上高で60%を占め、これまでソニーを支えてきたエレクトロニクス部門が赤字に陥ったためだ。しかし、それでもソニーグループ全体として黒字を維持できたのはゲーム部門が大きく貢献したからである


ソニーの部門別の営業利益を詳しく見てみると、ゲーム部門はすべての部門(金融・音楽・映画・エレクトロニクス)を抑えてトップの利益を稼ぎだしている。売上高ではわずか13%程度でしかないゲーム部門が、ソニーグループの全営業利益の60%を生み出しているのだ。前期のソニーの黒字化に大いに貢献したのは、売上高においてわずかなシェアしか持たないゲーム部門に他ならないのである。


この結果、ゲーム部門はソニーにとって必要不可欠な存在にまでなったと言うことができる。ソニーの出井会長もゲームなどのコンテンツ事業を再評価しているようで、これらの事業を軸としてソニーグループの未来像を描いている。簡単に言えばコンテンツを武器に、ソニー製品を売り込もうとしているのだ。


ゲームは、その良い例だ。ゲームという非常に魅力的なコンテンツを武器にすることでソニー製のゲーム機を売ることができる。それによりエレクトロニクス部門は利益を挙げ、なおかつPS2の普及はDVDソフトの普及を手助けをする。そうなると、優良なDVDソフトを多数保有している映画部門(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)の収益をも押し上げる要因にもなる。コンテンツ事業を軸にすることで、ソニーグループ全体に相乗効果をもたらすことができるのだ。


これからのソニーにとって必須であるコンテンツ。その代表格であるゲーム事業は、それこそソニーの未来を左右するといっても過言ではない。ならば、ゲーム部門はこれから先も常に高収益を挙げ、人々を惹きつけるだけの魅力あるソフトを提供していく必要があるはずである。


そのためには、他社とのゲーム機戦争に負けるわけにはいかない。もし、負けることがあれば、影響はSCEだけに留まらない。ソニーグループの今後を大きく変えてしまう可能性も十分にあるのだ。ソニーとしては、それだけは避けたい。だから、できるだけ早めにゲーム機戦争での勝利を手に入れたいのだ。


先の平井氏の発言は、こうした背景があったために発せられた言葉ではなかっただろうか。ゲームなどのコンテンツが導くソニーの未来をより盤石なものにするためには、XboxやGCとの決着はもう済んでいると公言し、PS2の勝利をグループ内や業界関係者、なによりユーザーに知らしめる必要があったのだろう


圧倒的な普及台数と豊富なソフト、さらにSCEの勝利宣言が組み合わされればユーザーはどうしてもPS2に目を奪われる。それによって普及台数がさらに伸びれば、ソフトメーカーもPS2を中心にソフトを開発せざるを得ない。ハードが普及し、ソフトが集まるという好循環がいったん始まれば、後発メーカーがそう簡単に覆せるものではない。


勝者の立場に一番近いPS2が勝利宣言をすることでその好循環の流れを一気に加速させ、PS2の勝利を“本当”に確定させてしまいたいと平井氏は考えたのではないだろうか


“平井発言”の真相はソニーグループの方針が別の形で表れたと解釈できるのだ。(つづく)


→第三章:「空回り」へ続く

2007年07月31日

過去のコラム編集:2002年6月「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」Part1

当該記事は、2002年6月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「PS2、勝利宣言 〜ソニーの事情〜」の第一章です。

2002年の記事ですので、かなり古い記述になっておりますが、文章の保存を
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第一章:「勝利宣言」


『ゲーム機戦争は終わった。…リーダーになれなかった企業に次のチャンスはない』(2002年 5月27日日本経済新聞)。2002年2月にマイクロソフト社の「Xbox」が発売され、ようやく「プレイステーション2(PS2)」「ゲームキューブ(GC)」「Xbox」の三台の主要なゲーム機が出揃い、これから本格的な“ゲーム機戦争”が始まるという所で、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカの平井社長はSCEの勝利を高らかに宣言をした。まともに考えれば、当事者が戦いの最中に言うべき言葉ではない。だが、他のゲーム機の数倍の普及台数を持ち、独走態勢に入ろうとしているPS2を抱えるSCEならば許される言葉でもある。


そもそも、ゲーム業界に籍を置く人間、特にハードメーカーの人間の物言いははっきりとしており、多少過激な発言をすることもある。最も歯切れの良い人物は、数々の言動でゲーム業界に波紋を投げつづけた任天堂前社長の山内氏であるが、SCEの人間もそれに負けてはいないようだ。


SCEの勝利宣言に、任天堂の社長に新しく就任した岩田社長は『ゲーム機は冷蔵庫のように壊れなければ2台目を買わないというものではない』(2002年 5月31日毎日新聞)と“大人しめ”の反論したが、GCが四百万台程度の普及台数ではその反論も力強さに欠ける。しかし、SCE自身が勝利宣言をしなくとも、圧倒なリードを保っているPS2がゲーム機戦争の勝利者に最も近い場所にいるのは、周知の事実である。


それなのに、なぜSCEはあえて勝利宣言をしなければならなかったのか。考えようによっては、ただ単に平井氏がPS2の好調さのあまり口を滑らせたと考えることもできる。あるいは、彼の一言でゲーム業界では良く聞く“舌戦”が仕掛けられたのだとも想像できる


確かにそういった面があるのも否定できない。だか、この発言に隠された真意は「舌戦」だけではないだろう。もしかすると、あの勝利宣言はSCEがゲーム機戦争を早期に決着させたがっているが故に出てきた発言なのかもしれない


SCEが勝利宣言を出せば、業界関係者だけではなく、一般ユーザーにもその内容が耳に入る。そうなると、新たにハードを購入しようと検討しているユーザーはPS2以外のゲーム機購入をためらうだろう。PS2との間に圧倒的な差があれば、ソフトの量はPS2より少なくなるからだ。ソフトを遊ぶためにゲーム機があるのだから、ユーザーはそうしたハードの購入を控えるようになる。平井氏の発言はそうした流れを作り、PS2の勝利を早めに確定させたい気があったのではないか。

では、SCEが早期にゲーム機戦争を決着させたいと考えているとすれば、その理由は何なのか。次回からは勝利宣言に隠された“ソニーのあせり”に迫ってみたい。(つづく)


→第二章:「ソニーのあせり」へ続く