2007年08月14日

過去のコラム編集:2002年3月「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」part4

当該のゲーム業界記事は、2002年3月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」の第四章(最終章)です。

2002年の記事ですので、かなり古い記述になっておりますが、文章の保存を
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第四章:「進歩の足跡」


長年、赤字に喘いでいた数社のゲーム会社が2001年中間期で黒字転換を果たし、通期でも黒字を達成する見込みであるという。赤字を克服した企業は、それぞれの手法で数期ぶりの利益を手にいれたが、その過程は特筆すべきものがある


殊に、アトラスとセガは自社に染みついた赤字因子との格闘においてさまざまな教訓を残した。アトラスはゲーム業界の一発屋体質からの決別を図ることで黒字に浮上し、セガは失敗から次なる成功を生み出したおかげで、生きかえることができた。


彼らが残したものは、今後のゲーム業界において、おそらく活かされる。どん底から立ち直った両企業の貴重な教訓を、活かさない手は無いからだ。そして、この両者がもたらしたものは、ゲーム業界全体の進歩を生み出していくだろう


もし、彼らの経験を活用する術が上手く広がったのなら、ゲーム業界の体質はより強化される。業績の変動率が高く、“水物”とも揶揄され続けてきた、そんな立場から一歩進むことができる。確かに、短期的には、業績が激しく上下する場合もあるだろう。ゲームをビジネスにする限り、短期のそれを解消するのは無理かもしれない。


近視眼的な観点から衰退論者に、何も変わっていない、と非難されることもあるだろう。だが、長い目で考えれば、変動幅は少なくなる。活かす努力をしていけば、“水物”と呼ばれるほどの予想のつかない動きはしなくなるはずだ。それは、ゲーム業界が進歩した証とは言えないだろうか。しかも、進歩をもたらしたのは、赤字から苦難の末に黒字に転換した企業のおかげだと言えないだろうか。


長期にわたって不振を極めていたゲーム会社から、ゲーム業界の進歩の胎動を感じられたのは、この業界がまだまだ発展する可能性を秘めているからだ。しばらく勢いの感じられなかった企業が、再び勢力を盛り返し、活躍をする。衰退論者が言うように、業界自体が衰退していくのであれば、そうした企業は二度と浮上することなく、最初に姿を消すだろう


しかし、経営不安説が流れても、彼らは業界から退場せずに、もう一度復活してきたのだ。これこそ、業界の発展途上を裏付けるものではないか。進歩の足跡が続く限り、ゲーム業界のダイナミズムはまだまだ失われない。(おわり)
タグ:ゲーム業界

2007年08月13日

過去のコラム編集:2002年3月「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」part3

当該のゲーム業界記事は、2002年3月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」の第三章です。

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第三章:「失敗からの成功」


『ゲーム産業は将来がないと言われるが、とんでもない』(2001年3月23日日経産業新聞)。ゲーム産業の将来性を否定する声に対して、反論しているのはコーエーの襟川恵子会長(当時、社長)だ。いつの時代でも、ゲーム産業はいつか衰退する、と言う人は必ずいる。こう指摘される背景には、ゲーム業界に不安定さが常に付きまとっているからだろう。


2001年度の中間期、コナミは減益に陥ったがその際、同社の上月社長は『ヒットビジネスの怖さを見せつけられた』(2002年1月11日日本経済新聞)と語り、ゲームビジネスの負の面を“怖い”と表現した。前記したアトラスの例からもわかる通り、ゲームビジネスには安定性が欠けている衰退論者が絶えない理由は、その辺りが残念にも気に入られてしまった結果なのだと思われる


業績が不安定なのは、ひとつに「ゲームビジネスの失敗は大きく響く」からだ。ゲームやハードが売れないと業績に大きく響く。しかし、商品が売れないという失敗以上に「企業戦略の失敗」も大きな打撃になる。戦略を見誤って、低迷するのはどの業界でも起こり得るが、中でもゲーム業界での戦略の失敗は致命傷にもなりかねない。セガの失敗はその典型だろう。


かつて優良企業だったセガは、オンラインの世界に過度の期待をし、いち早く覇権を握るためにハード事業やプロバイダ事業に多額の投資を行い、その結果大失敗をした。その失敗は、一時的にセガ自身の存続さえわからなくしたほどだ。これは、明らかに企業戦略の失敗だ。現在のゲームビジネスは昔と違って、巨額の資金が必要なビジネスになっている。これに多額の投資をし、失敗したとなると会社は簡単に傾いてしまう。セガの戦略の失敗は、間違い無くセガ自身の致命傷になりつつあったのだ


しかし、セガは自分自身がしでかした大失敗を、かつて無いやり方で成功への礎にした。それまで懸命に尽力してきたハード事業からの撤退を表明し、ソフトメーカーとして生きることで失敗を成功に変えようとしたのだ。過去にハードメーカー側から、現役のハードの製造を中止します、とアナウンスされたことは無い。


…メーカー側から、製造中止という形で明確に“終わり”をつきつけられたことはなかった』(P116 「週間ファミ通 No.684」 2002年1月25日エンターブレイン)とアトラスの岡田氏は語っている。それだけ、セガのハードの撤退宣言は異例だったのだ。しかし、ソフトメーカーへの転身によって、セガを苦しめていたハード事業はなくなり、2001年中間期に久しぶりに営業黒字を生み出すことができた


これは逆に言えば、ハード事業の失敗があったからこそ、ソフトメーカーとしての成功があったと考えることができる。もし、ハード事業がもっと中途半端に上手くいっていたら、ソフトメーカーとして生きようと決意せずに、延々としてハード事業を続行し、それこそ本当に会社が無くなるまで赤字を垂れ流しつづけたかもしれないのだ。


企業戦略の大失敗を、成功に結びつけたセガの試みは今後のゲーム業界の良い教訓をもたらす可能性がある。それはセガのように、会社が傾くほどの失敗をしても、それを次なる成功に結びつられる柔軟な発想を持てば、失敗から復活するチャンスはあると明らかにしたからだ。セガの教訓が広まれば、失敗の多いこの産業をもっと強いものにすることができる。だからこそ、セガの黒字転換には大きな意味が含まれているのである。(つづく)


続きはこちら→第四章:「進歩の足跡」
タグ:ゲーム業界

2007年08月12日

過去のコラム編集:2002年3月「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」part2

当該のゲーム業界記事は、2002年3月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」の第二章です。

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第二章:「プリクラの復活」


プリクラといえば、90年代後半に一大ブームを巻き起こした“お化け商品”である。開発をしたのはアトラスである。アトラスは、それまで「真・女神転生」を生み出したゲームソフトメーカーとしての印象が強かったが、プリクラのヒットによって世間の評価は、プリクラメーカーへと様変わりした


プリクラ市場は、最盛期のころで1000億円にまで巨大化し、ブームの仕掛け人であるアトラスはかなりの恩恵にあずかった。ブームが最高潮に達していた 96年度・97年度にアトラスが稼ぎだした営業利益はおよそ140億円。しかし、その内訳を見てみると、96年度には前年度比約九倍の94億円を荒稼ぎしているにもかかわらず、翌97年度には、すでに陰りが見え始め、営業利益はほぼ半減し、50億円に留まっている。


つまり、プリクラブームは97年度の時点で収縮に向かっていたのだ。それを証明するかの如く、98年度には利益どころか、一気に8億円の赤字に転落をしているプリクラに溺れたアトラスの迷走はここから始まる


98年度からの三年間は、アトラスにとってただ赤字を積み上げる年月でしかなかった。ブームが過ぎ、売れ残ったプリクラを廃棄するために総額の100億円以上の純損失を出す羽目になったのだ。ここで


「140億円の利益に対して損が100億円で済んだのだから、まだましだ」と考えることは出来ない。なぜなら、それまでアトラスが利益として手にした額は実際には60億円程度にしか過ぎないからだ。140億円を稼いだと言っても、これは「営業利益」である。ここから税金などが差し引かれるわけであるから、アトラスの手元に残る金額は、かなり少ないものになる。だから、単純に考えて、プリクラブームでアトラスは利益を得るどころか、40億円もの巨額の資金を失っているのである


だが、アトラスはここで終わらなかった。ブームに乗って急成長し、それが収束すると経営が傾く「ゲーム業界では良くある話」のひとつにはならなかったのだ。プリクラ事業を徹底的に見直し、ユーザーのニーズにあった商品開発や、接客対応・メンテナンス対応のレベルアップ、売れ残りが発生しないような生産方式に変更するなどの改革を行った


特に、ニーズに応えた新商品は、プリクラを再度人気化させる大きな要因にもなった。現在では、第二次プリクラブームにあると言われるほどにまで、プリクラ市場は回復をしたのである。


ここから、ゲーム業界の進歩を見て取ることが出来る。良く言われるように、ゲーム業界は“一発屋”的な側面を持っている。プリクラで急成長したアトラスが良い例だ。これまでであれば「一発屋はひとつの大ヒット商品を当てて、それでおしまい」という場合が多かったが、アトラスはそれを見事に覆した。完全に旬を過ぎていたプリクラをもう一度、ブームと呼ばれるまでに復活させたのだ。


これがゲーム業界に与えた意味は大きい。一発屋の典型であったアトラスが再起したことは、一足先にゲーム業界の一発屋体質から抜け出したと言っても良いからだ。アトラスの先例は、必ず他でも活かされる。そうなれば、ゲーム業界から一発屋的側面が薄れていき、業界をたびたび襲ってきた“波”は平準化されるだろう。アトラスは、黒字に復帰することで、ゲーム業界を成長させる種子を蒔いたと言っても良いのだ。(つづく)


続きはこちら→第三章:「失敗からの成功」
タグ:ゲーム業界

2007年08月11日

過去のコラム編集:2002年3月「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」part1

当該のゲーム業界記事は、2002年3月頃(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「企業再生 〜黒字転換の意味とは〜」の第一章です。

2002年の記事ですので、かなり古い記述になっておりますが、文章の保存を
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第一章:「黒字転換」


2001年度の各ゲーム会社の業績は堅調なところが多い。まだ、期末の業績が明らかになってはいないので、全体の論評は時期尚早の感があるが、コーエーやテクモは通期で高水準の成績を出すと見込まれている。反面、これまで好調を維持してきたコナミやエニックスが中間期・通期共に減益になると報じられてはいるが、利益水準は高い位置でプラスを維持してる。2001年中間期で、前年同期と比較して、大きな赤字に転落するのは映画事業で多額の損失を出したスクウェアぐらいなものだろう。


スクウェアとは逆に、2001年中間期に赤字から黒字化したソフトメーカーは多い。セガやナムコ、タイトーやアトラスなどがそれに当てはまる。特にナムコ以外の三社は、数年ぶりに営業利益の段階で黒字転換を果たした。長年の赤字体質から脱却した背景には、第一にゲーム市場の回復がある


特にアミューズメント施設の収益回復が目覚ましい。ここ数年は既存店が、売上高の前年度割れを記録するなど不振を続けてきたが、2001年度は不採算店舗を閉鎖するなどのリストラ効果や、人気格闘ゲームシリーズの続編の登場・写真シール作製機「プリクラ」の再人気化などがあり、売上が再び伸びるようになった。ナムコのアミューズメント施設の場合、昨年八月から前年同時期の売上水準を上回るようになったという。


更には家庭用ゲーム機市場も回復の傾向が出てきている。一年間でゲームソフトが最も売れる時期であり、ゲーム業界が最高に盛り上がる季節であるクリスマス。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行しているエンターブレインは、昨年、この時期の売上が大きく伸びたと分析する。『…昨年十二月単月のゲーム市場規模は前年同月の一・五倍に達したとみている』(2002年1月18日日本経済新聞)。


最も多くゲームソフトが売れる時期に、市場規模が急激に拡大すれば、ソフトメーカーの業績に良い影響があるのは間違いない。この恩恵は、業績の回復に大いに貢献したのだ。


ゲーム市場の回復の追い風を受け、黒字転換を果たした各社。だが、赤字に陥る前までは、どのソフトメーカーともかなりの利益をあげる優良企業だった。業務用ゲームではセガやナムコが、アミューズメント施設運営ではタイトーが業界でトップクラスの地位にあったし、アトラスはプリクラで空前の利益をあげていたはずである。それなのに、いとも簡単にマイナスに転落し、赤字体質が定着してしまうのだから、ソフトメーカーの経営は難しい


赤字を数年振りに克服し、黒字に転換したナムコを除く三社は、それぞれ長年染みついてきた悪い体質を各々独自のやり方で改善を図ってきた。この“復活劇”は彼らにとって大きいことであるが、実はゲーム業界にとっても意味のある出来事でもあるのだ。


は、黒字転換にはどういった意味合いがあるのだろうか。それを、探るためには数期ぶりに黒字化したソフトメーカーに照準を合わせてみる必要があるだろう。(つづく)


→第二章:「プリクラの復活」へ続く
タグ:ゲーム業界