2007年09月22日

過去のコラム編集:2001年11月「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」Part4

当該のゲーム業界記事は、2001年11月2日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」の第四章(最終章)です。

2001年の記事ですので、かなり古い記述になっておりますが、文章の保存を
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第四章(最終章):「淘汰の時代」


ソフトが売れない時代にあって、ソフトメーカーは苦しい経営を迫られている。それは、ゲーム機の高性能化に伴う開発費の上昇で、コストが膨らむ一方で、ソフトが売れなくなったからだ。しかも、宣伝が、ゲームが売れるための必須の条件になりつつある状況下では、ソフトメーカーの経営を更に圧迫する。開発費は何とか負担できても、宣伝費に大きな資金を投入できないようなソフトメーカーはこれまで以上に苦しむだろう


そんな状況を知ってか知らずかコナミの上月影正社長はこう語る。『エンターテインメント業界は淘汰の時代に入った。今後数年で業界内の色分けが進み、二極、三極に再編される。コナミもシェア拡大のための基盤強化が急務だ』(2001年7月27日日経産業新聞)。


上月社長は常々「エンターテインメント業界は再編される」と主張してきたが、その根拠として開発費や宣伝費の高騰で資金不足に陥るソフトメーカーがこれから数多く出ると考えているからであろう。確かに、ゲーム業界の現状を振り返れば上月社長の予測は現実的なものであると思える。力を失ったソフトメーカーはゲーム業界から去るか、他のメーカーなどに支援を受けてそこに留まり続けるか以外に道はないのだから。


こうして見ると、これから起きるであろう宣伝費の高騰は確実に、上月社長の予測する「業界再編」を促していると言えるのではないだろうか。開発費だけではなく、宣伝費も高騰すれば、それだけ多くのソフトメーカーが淘汰の対象になる。なぜなら、ゲーム業界を取り巻く環境の変化が、宣伝費の増加を引き起こし、その宣伝費の増加が体力のないソフトメーカーをさらなる苦境に立たせるからだ。


これまでは、開発費が不足し、ゲームの開発ができないソフトメーカーが淘汰されてきたが、これからは宣伝のできないソフトメーカーが業界から淘汰される時代になりつつあるのだ。そんな折、2001年10月29日付の日本経済新聞は、シリーズ合計100万本の販売実績を誇る「ラングリッサー」シリーズを抱えるキャリアソフトがアトラスに買収され、完全子会社になったと伝えた。業界再編は静かに、そして着実に進んでいるのであろう。


ゲーム業界はもはや優れた開発力を持っているだけでは生き残れない場になってきた。開発力だけでなく、宣伝力も兼ね備えているソフトメーカーでなければ、業界に留まり続ける事が困難な状況に変わってきたのだ。

小規模ソフトメーカーには、嫌な時代が訪れることになる。(おわり)
タグ:ゲーム業界

2007年09月20日

過去のコラム編集:2001年11月「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」Part3

当該のゲーム業界記事は、2001年11月2日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」の第三章です。

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第三章:「苦悩」


宣伝がソフトの売上を左右する力を持ち、それが重要視されてくると、当たり前ではあるがソフトメーカーが負担しなければならない宣伝費は高騰する。宣伝費の高騰は、ソフトメーカーにとって頭の痛い問題だ。ただでさえ、開発費の高騰に悩まされているのに、ゲームの開発とは直接的に関連性のない宣伝費まで膨らむのだから。だが、宣伝をしなければせっかく作ったソフトが売れないかもしれないのだから、ソフトメーカーは苦しい


開発費と宣伝費の高騰はソフトメーカーの負担をさらに重くする。それを何とか回避すべくソフトメーカーのアトラスは、角川書店と共同でゲームを開発する計画があることを明らかにしている


つまり、アトラスは角川書店と共同でソフトを制作することで自社負担分を軽減し、リスクの分散を図っているのだ。自らが、ゲーム開発・宣伝に関わる資金を全額負担するのではなく、他の企業からも負担してもらうという方法は、高騰する開発費と宣伝費を無理に削ることなく、しかも低リスクでソフト開発・販売ができるひとつのやり方であろう。


アトラスとは違った方法でリスクを低減しているのが、コナミの「ゲームファンド ときめきメモリアル」であろう。ゲーム制作に関する費用を、企業からではなく個人から負担をしてもらう方法もまたリスクの低減を図るひとつのやり方ではある。


これまでゲームビジネスの高コスト体質は高騰を続ける開発費が主たる原因であった。しかし、これからは開発費だけではなく、宣伝費も高騰せざるを得ない状況に変わっていく。宣伝を重要視し、巨額の資金を投入した「鬼武者」の大ヒットはその手法が有効であると立証した、といっても良いからだ。ゲームが売れない時代の中で、ゲームを売るためには、これまでの手法を踏襲していくだけではもう駄目なのである。


その一方で、ソフトメーカーはビジネスの高コスト体質を何とか変えようと努力してきた。コスト高の傾向がこれ以上続くと、企業自体の経営に悪影響を与えかねない危険性があるためだ。だが、ソフトを売るためには宣伝費にも多額の資金を投入しなければならないと「鬼武者」の成功が物語る。コスト高を解消したくとも、コストが膨らむ状況下にあるソフトメーカーのジレンマは当分解決しそうにない。(つづく)


続きはこちら→第四章(最終章):「淘汰の時代」
タグ:ゲーム業界

2007年09月17日

過去のコラム編集:2001年11月「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」Part2

当該のゲーム業界記事は、2001年11月2日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」の第二章です。

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第二章:「売れる条件」


ゲームの宣伝費は、ゲーム開発と直接的に関わりがないのであれば、削減しても良いのではないだろうか。ゲームソフトで最も大事なものは、そのゲームが持っている“質”であるはずだ。それならば、ゲームの“質”そのものに影響を与えない宣伝費は、コスト削減の一環として減らされてもさほど問題にはならないと思える


では、なぜ「鬼武者」や「決戦2」では大きな資金が宣伝費として投じられているのか。その答えとしてはカプコンやコーエーが巨額の宣伝費を投入できるほど余裕のある企業だから、と言うこともできるが、それよりもゲームを売るためには宣伝が欠かせないようになってきたからではないか。「ゲームさえ面白ければ売れる時代ではもはや無くなった。だから、宣伝が重要視された」。そう考えられないだろうか。


多額の宣伝費をかけた結果、「鬼武者」がミリオンヒットしたことについて、同作品のプロデューサーである稲船敬二氏は、こう語る。『現在のゲームの売り方ってのが見えてきたような気がします。現在ではゲームが面白いだけでもダメだし、プロモーションだけが良くてもダメ。話題性だけでもダメ。それがしっかりとミックスされて、初めてゲームは売れる。昔のゲームは単に面白ければ売れたんです』(P5 週刊宝島 2001 3.14 NO.496 宝島社)。


つまり、稲船氏はゲームを売るためには面白いゲームを作るだけでは駄目で、それが売れるような宣伝活動をし、話題性を生み出して、初めて売れる条件が整うと言っているのである。そのためには、宣伝は必須になる。宣伝費6億円はPS2初のミリオンヒットを生み出すためには、必須の条件であったのである。


宣伝を巧みに使った結果、大成功を収めた例がある。それは、映画「千と千尋の神隠し」だ。2001年7月に公開後、わずが2ヶ月程度で日本映画最高の興行収入を記録し、それをなおも更新し続けている「千と千尋の神隠し」であるが、同作品を制作したスタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫氏はこの大成功に関して『製作、宣伝、興行が一体となった努力が成功につながった』(2001年10月16日日経産業新聞)と述べ、宣伝の果たした役割は決して“製作”や“興行”に負けていないことを強調する。


確かに「千と千尋の神隠し」の宣伝に協力した企業は、ローソン・ネスレジャパン・徳間書店・講談社・日本テレビ等といった有力企業ばかりである。それらが独自の手法で宣伝に協力したのだから、その宣伝効果は計り知れないほど大きかったと思われる。当たり前の話であるが、宣伝の規模は大きければ大きいほど、人々に認知されやすくなる。


しかも、マスコミやコンビニといった人々が普段から日常的に接する機会の多い企業の宣伝なのだから、その認知度は飛躍的に高まったはずだ。その結果が歴史的な成功をもたらしたのだから、宣伝がいかに重要であるかが分かる


宣伝が今回の成功をもたらす要因を作ったと話す鈴木氏の主張は、こうして見れば納得がいく。それと同時に、カプコンやコーエーが宣伝を重要視する背景には、「千と千尋の神隠し」が証明した宣伝の影響力をソフト販売に活かそうと考えているからなのである。(つづく)


→続きはこちら:第三章「苦悩」
タグ:ゲーム業界

2007年09月15日

過去のコラム編集:2001年11月「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」Part1

当該のゲーム業界記事は、2001年11月2日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「膨らむ宣伝費 〜その功罪〜」の第一章です。

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第一章:「鬼武者の成功」



ソフトメーカー大手のカプコンのプレイステーション2(PS2)用ゲームソフト「鬼武者」。このソフトは2001年1月の発売から大きな売上を記録、 PS2用ゲームソフトとしては初めて100万本の販売実績を残した。ソフトが売れないと言われ続けている昨今の環境下で、新作ソフトが発売から早い時期に 100万本の大台を記録することは珍しい事である。


しかし、カプコン側からすれば、ゲーム開発に投じた資金の大きさを考えると、この程度の販売本数では驚いてはいないだろう。「鬼武者」は『構想3年、制作費十数億円、宣伝費6億円』(P3 週刊宝島 2001 3.14 NO.496 宝島社)を掛けた大作ソフトなのだから。ソフトを世に送り出す時は「100万本も充分狙える」と思っていたに違いない。


「鬼武者」の特筆すべき点は、PS2初のミリオンヒットを記録したという販売実績だけではない。その、ゲーム開発にかかった費用、特に宣伝費の大きさも特筆すべき点だろう。制作費が10億円台であるのに対し、宣伝費だけでも6億円を投じてしまっているのだから。仮に、規模の小さいソフトメーカーであれば、 6億円もあれば巨額の開発費になってしまうような額である。それぐらいの大金をゲームの制作とは直接関係のない宣伝だけに使っているのであるから、注目に値する


だが、宣伝に大金を使っている所はカプコンだけではない。コーエーもPS2ソフト「決戦2」で3億円弱の資金を宣伝に投じている (Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト キーマン・インタビュー 「コーエー会長襟川陽一氏」 2001)。「決戦2」の場合、宣伝費は「鬼武者」の半分程度の宣伝費であるが、『7億円強』(同)という開発費から考えれば、投入金額は少ないものの比率としては大きなものであると言える。


カプコンやコーエーの例からは、ソフトメーカーが宣伝費に巨費を投じている姿が見えるが、この傾向は間違いなく、コストの増加を招く。ただでさえ、ゲーム開発費が高騰しつつあるのに、宣伝費にまで大きな資金を投じているのだから、当然の結果である。


しかし、その一方でソフトメーカーはゲーム制作に関するコストを削減しようと努力している。代表的な所ではスクウェアが挙げられるだろう。スクウェアの鈴木社長は自ら『高コスト体質からの脱却』(P2 スクウェアアニュアルレポート2001)を目指すと公言し、目的達成にむけて試行錯誤をしているのだ。その他のメーカーでも無駄なコストの削減は大きな経営課題である。カプコンやコーエーも例外ではない。


そうであるならば、ゲーム開発とは直接の関連性を持たない宣伝費は削られても良いのではないか。なぜ、「鬼武者」や「決戦2」には、宣伝費に大きな資金が投じられたのであろうか。


次回からは、それを考えると共に、最終的に宣伝費が今後、ゲーム業界にもたらす影響についても考察することにしたい。(つづく)


→続きはこちら:第二章「売れる条件」
タグ:ゲーム業界