2007年11月13日

過去のコラム編集:2001年9月「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」Part4

当該のゲーム業界記事は、2001年9月15日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」の第四章(最終章)です。


初代XBOXが発売される前の同機に対する評価は当時より割れておりました。
特にソフトメーカーの間では淡い期待と軽い失望が綯い交ぜ(ないまぜ)に
なっている状況でした。このコラムではその辺りの原因を探るものと
なっております。初代XBOX発売前の当時の状況が少しでも感じて
頂ければ、と思っております。


「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」第四章:分かれた評価の背景

第四章(最終章):「分かれた評価の背景」


Xboxに参入する理由はそれぞれありつつも、主要ソフトメーカーはXboxに集まった。しかし、Xboxに期待するメーカーと、Xboxの売れ行きに懐疑的な見方をするメーカーに、メーカーの間で立場が大きく分かれてしまっている。


どうしてXboxには一定の評価が定まりつつあるのに、各メーカーは一方ではXboxに期待をするようになったり、もう一方ではXboxに懐疑的になってしまったのだろうか。なぜ、評価が分かれてしまったのだろうか。


各ソフトメーカーに「Xboxは期待できる」「Xboxの普及に疑問」と思わせ、Xbox期待派・懐疑派に分かれさせた背景は、ソフトメーカー自身の企業規模が関係しているからではないだろうか


Xboxに好意的なメーカーの代表であるテクモの2001年3月期の売上規模は、90億円台であるのに対し、懐疑的なメーカーであるセガは2000億円台である。同じくソフトの販売本数はテクモが100万本台なのに対し、セガは約1000万本台である。このようにテクモとセガには、企業規模において大きな開きがあるのだ。では、その企業規模の差がXboxの評価にどう作用したのか


企業規模の小さいテクモの場合、Xboxに大きな期待をしている。もちろん、テクモもXboxの売れ行きに不安を抱えているのは確かだ。しかし、それでも期待するのはPS2で飛躍を遂げ、企業規模を拡大させたコーエーのようにXboxで大きく飛躍をしたいと思っているからだ。


コーエーもPS2で波にのるまでは売上高で150億円程度、利益も10億円台の企業であったのが、PS2で成功を収めた結果、2002年3月期では、売上高で約100億円増加の250 億円、利益は四倍の約50億円になると見込まれている。この急成長はPS2を上手く利用したために達成されたものである。


業規模が小さい所が大きく飛躍するためには良いソフトを作り出すのは当然だが、それが大きく売れるためにはきっかけが必要だ。コーエーはPS2向けに「決戦」などの良いソフトを作り出したが、それを大きく売るきっかけとして、ソフト不足が叫ばれていたPS2を利用したのである。このような成功例があるからこそ、テクモはXboxに大きな期待を寄せ、企業規模の拡大の為に看板ソフト「DOA3」を供給することにしたのである


一方、企業規模の大きいセガの場合、もうそれが充分大きいために、評判の乏しいXboxで飛躍を遂げようとは思っていない。そうなると、その時点で Xboxには、たいした魅力を感じていないはずだ。なぜなら、セガにはテクモのようなXboxに対しての期待感がないのだから。


しかも、XboxがPS2 やGC相手にどのくらい売れるか分からず、Xbox向けのソフト市場が成立するのか全く未知数であることも期待感を損なわせる。PS2のように発売される前から売れることが約束されているゲーム機で、なおかつ業界内で期待が高まっているのであれば、セガの期待度もまた違ったものになっていただろう。


だが、実際はそうではなく、一番売れないかもしれないと思われているのだ。これでは、セガは高い期待を抱くわけにはいかない。セガには、Xbox以外にPS2に代表される有力な市場がすでにあるために、別にXboxがそれほど売れなくても問題はない。


それでなくても、Xboxの発売前にGCという有力ゲーム機が登場する。これでは、Xboxの普及に懐疑的になるのも無理はない。テクモのような期待もなければ、売れるかどうかも怪しいXboxには必然的に低い期待しか持てないのである。


結局、Xboxは厳しいと、期待派メーカーも懐疑派メーカーも一致した認識を持っているが、企業規模の小さい方がXboxをてこに飛躍を目指しているためにXboxに期待し、反対に規模が大きい方はXboxで飛躍をしようとは考えていないために、余り期待をしていないのである。


しかし、いずれにせよXboxが売れる事はどのメーカーにとっても良いことである。MSは今年の秋の東京ゲームショウでは出展社最大のブースを確保し、ユーザーにアピールするという。そこで、不利な下馬評を覆せるのだろうか。MSの秘策に“期待”したい。(おわり)

2007年11月12日

過去のコラム編集:2001年9月「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」Part3

当該のゲーム業界記事は、2001年9月15日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」の第三章です。


初代XBOXが発売される前の同機に対する評価は当時より割れておりました。
特にソフトメーカーの間では淡い期待と軽い失望が綯い交ぜ(ないまぜ)に
なっている状況でした。このコラムではその辺りの原因を探るものと
なっております。初代XBOX発売前の当時の状況が少しでも感じて
頂ければ、と思っております。


「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」第三章:期待派の参入理由

第三章:「期待派の参入理由」


Xboxの普及に懐疑的なメーカーに対して、逆に高い期待をかけている所もある。その代表格がテクモであろう。テクモは自社の看板ソフトとも言える「DEAD OR ALIVE」(DOA)シリーズの最新作「DOA3」をXboxに投入すると発表した。


「DOA」シリーズはこれまで、「DOA」「DOA2」とあるが、それぞれトータルでは50万本、150万本の出荷があるビックタイトルである。テクモにとっては、自社を代表するソフトである「DOA3」を、まだ発売もされていないXboxに供給するのであるから、テクモ側のXboxへの高い期待が読み取れる


しかも、「DOA3」はXbox以外で発売する予定は無いと言う。つまり、PS2やGCなどには移植されないのだ。これらの事を考慮すると、テクモは全体的な評価が芳しくないXboxに対して強い期待感を持っていると言えよう。では、どうしてテクモはまだ未知数であるXboxにそこまで期待をするのであろうか。テクモがXboxに力を入れる理由。それはコーエーの成功にある


コーエーはPS2の登場で最も恩恵を受けたメーカーの一つである。ソフト不足が心配されていたPS2発売時に大型ソフト「決戦」を投入、40万本を超える本数を出荷することに成功した。その後も、「真・三國無双」というソフトも発売し、早い時期に30万本を上回る本数を出荷した。


コーエーの堀口常務はこの結果について『パソコン向けの転用ではなく、最初からゲーム機用に出したソフトとしてはかつてない成功』(2000年10月4日日経金融新聞)と述べている。


コーエーのソフトが、このかつてない大成功を納めた理由の一つとして、PS2発売後、暫く続いたソフト不足の時期に、優良・大型ソフトを供給した事があろう。PS2と同時発売の「決戦」は、その他の同時発売の大型ソフトが少なかったため、相対的に大きな注目を浴び、大ヒットする一因となった


それと同時に「決戦」のヒットは、コーエーの知名度を向上させることになる。「真・三國無双」のヒットは「決戦」の成功に依るところもあるだろう。


ソフト不足の新しいゲーム機に大型ソフトを投入すれば、ソフトが不足しているために高い注目を浴び、ヒットする。「決戦」「真・三國無双」のヒットは、こうした成功例を作り出したのだ


テクモが、売れ行きが厳しく、ソフトも不足していると言われているXboxに自社の看板ソフト「DOA3」を本体と同時に発売する目的は、このコーエーの先例があるからだ。テクモの板垣執行役員は、Xboxには「DOA3」以外にあまり良いソフトがないと評されていることについて、こう答えている。


計算の範囲内だ。とてもよいことではないかとも考えている。(それは)“DOA3”が“Xbox”で最も注目を集めるソフトになるからだ。“DOA3”はまず米国、ついで日本、来春には欧州やオーストラリアなどで販売されるが、全エリアで“Xbox”本体と同時発売だ。“Xbox”を買った人は、みんな “DOA3”を買ってもらえるのではないかと期待している』(ZDNet Japan 「“DOA3”で“Xbox”に賭けるテクモの戦略と成算」 2001年6月6日)。


この板垣執行役員の発言から考えるに、テクモは明らかにコーエーの先例を意識していると言えるだろう。


このようにXboxに期待するメーカーが参入した訳は、PS2登場時にコーエーが見せた成功をXboxにて再現するためだったのだ。だからこそ、テクモを筆頭とする期待派メーカーは、業界全体のXboxへの評価が余り良くないにもかかわらず、ソフトを供給することにしたのである。


彼らはXboxの登場を「大きなチャンス」と見ている。(つづく)


→続きはこちら:第四章(最終章)「分かれた評価の背景」

2007年11月11日

過去のコラム編集:2001年9月「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」Part2

当該のゲーム業界記事は、2001年9月15日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」の第二章です。


初代XBOXが発売される前の同機に対する評価は当時より割れておりました。
特にソフトメーカーの間では淡い期待と軽い失望が綯い交ぜ(ないまぜ)に
なっている状況でした。このコラムではその辺りの原因を探るものと
なっております。初代XBOX発売前の当時の状況が少しでも感じて
頂ければ、と思っております。


「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」第二章:懐疑派の参入理由

第二章:「懐疑派の参入理由」


Xboxに対して、業界内での評価ははっきり言って厳しい。XboxがPS2やGCとの競争に勝ち、ナンバーワンプラットフォームになれる、とは殆ど思われていない。そのような状態であったにも関わらず、MSは評価をさらに下げるような行為を行った。


これによって、業界内の評価を更に悪化させたのは間違いないだろう。『元々日本は視野に入っていないようだ』(2001年8月28日日経産業新聞)とソフトメーカーから酷評されるようでは、それも理解できる。


ただ、そのようにXboxの普及に懐疑的なメーカーであっても参入を決めている。これはなぜか。どうして懐疑派メーカーは、自身の評価が余り高くない Xbox向けにソフトを供給することを決断したのであろうか。もし、Xboxは余り期待できないと考えたのであれば、そのまま参入を見送っても良かったのではないか。


Xboxの普及に懐疑的でありつつも、Xboxへ参入する理由は「一本でも多くソフトを売りたい」からである。現状のソフトメーカーは、ゲーム機の進化によって高騰する開発費をなんとか迅速に回収するために、同じソフトを他のゲーム機にも供給するやり方が多くなってきている。こうすることで、一つのゲーム機だけに供給するよりも、確実に売上増が見込めるからだ。


懐疑派メーカーがXboxに参入した理由は、ここにある。要するに、売り上げの確保の為に複数のゲーム機にソフトを供給したかっただけなのだ。複数あるゲーム機の中で、たまたまその一つがXboxであった、というだけの話なのだ。だからこそ、売れ行きには懐疑的ではあるが、新しいゲーム機であるXboxに参入することを決めたのである。


この考え方が強いのがセガではないか。実は『元々日本は視野に入っていないようだ』(同)と発言したのは、セガなのだ。もし、Xboxに期待感があれば、このような発言はあっただろうか。


セガは早い時期からXbox参入を表明していたが、Xbox向けのソフトはXbox以外に供給しないわけではない。セガは、Xbox向けのソフトに「セガスポーツNFL2K2」「セガスポーツNBA2K2」などを供給する予定でいるが、この二本のソフトともPS2でも発売される事になっている。すべては「売り上げを増やす」ためである。


他の懐疑派メーカーも基本的にセガと同様の戦略を打ち出すものと考えられる。とにかく、彼らは「一本でも多くソフトを売りたい」だけなのだから。もしかしたら、懐疑派メーカーにとってXboxにソフトを供給することは、自社のソフトを少しでも売るために新しく出来た“ゲームショップ”にソフトを並べてもらう、という感覚と同じなのかもしれない。(つづく)


→続きはこちら:第三章「期待派の参入理由」

2007年11月10日

過去のコラム編集:2001年9月「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」Part1

当該のゲーム業界記事は、2001年9月15日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」の第一章です。


初代XBOXが発売される前の同機に対する評価は当時より割れておりました。
特にソフトメーカーの間では淡い期待と軽い失望が綯い交ぜ(ないまぜ)に
なっている状況でした。このコラムではその辺りの原因を探るものと
なっております。初代XBOX発売前の当時の状況が少しでも感じて
頂ければ、と思っております。


「Xboxにのせた期待 〜その落差と背景〜」第一章:沈んだムード

第一章:「沈んだムード」


マイクロソフト(MS)は、2001年8月27日に行われた「Xbox Conference 2001 Summer」にてXboxの日本発売を延期すると発表した。当初、MSはXboxの発売時期を年内としていたが、それが今回の発表によって一転、来年 2002年2月22日へと変更になった。しかし、Xboxの発売延期は一部では予想されていた事態でもあった。


ゲーム情報誌で業界最大手「週刊ファミ通」の編集長浜村弘一氏は、発売延期が報じられる前に『日本はおそらく年内の発売は難しい』(ブルームバーグ「フォーラム:ゲーム機“Xbox”の国内発売は年内困難」 2001年8月24日)と述べ、今回の事態をあらかじめ予想していた。


ゲーム機の発売延期は、任天堂の山内社長に言わせれば『よくあること』(2001年8月28日日経産業新聞)である。確かに、ゲーム業界ではハードやソフトに関係なく発売延期は日常的によくあることだ。任天堂も次世代ゲーム機であるゲームキューブ (GC)を、日本・アメリカ共に予定されていた発売時期を延期している事を考えれば、同じゲーム機であるXboxの発売延期は特に不思議では無いし、ある程度予想もされていた事でもある。


ただ、発売延期は確実に業界のムードを盛り下げた。今年中に出揃うプレイステーション2(PS2)・GC・Xboxの3 機種の争いは、低迷を続けるゲーム市場を活性化させるものと期待されていたのだが、Xboxが早々に脱落した事で対決ムードに水を差した


元々、Xboxには高い評価が下されているわけではなかった。どちらかというと、3機種の中で一番低い位置に置かれていたと言っても過言ではない。そんなゲーム機が、さらに期待を裏切るような行為をしたのだから、Xboxに対する失望感が一気に高まったのも無理はない。


元々日本は視野に入っていないようだ』(同)と答えるソフトメーカーの一言が、ゲーム業界に漂う失望感を表している。GCが発売を延期してもなお、変わらない期待をされているのとは正反対である。


だが、そんな中でもXboxのサードパーティーは着実に増加している。「Xbox Conference 2001 Summer」では新たにアトラス、フロム・ソフトウェア、ナムコの三社がXboxへの参入を正式に発表した。これで、参入を表明しているメーカーはコナミ・セガ・カプコン・テクモ・コーエー・アトラス・ナムコ等となり、ソフトメーカーの大手が揃う事になった。


これらのメーカーの間でのXboxへの評価は、必ずしも一致しているわけではない。『HDDの搭載やオンラインへの取り組みなど、MSの日本市場への“本気”を感じた』(ZDNet Japan GameSpot 「“Xboxに期待”新規参入メーカー3社がコメント」 2001年8月27日)と話し、Xboxに大きな期待をしているメーカーもあれば、その一方で、先ほどのコメントのようにXboxに余り期待していないメーカーもある。つまり、メーカー間では、Xboxに対する評価が割れているのだ。


では、どうしてメーカーの間でXboxへの評価に差が生じているのであろうか。どのメーカーにとってもXboxは同じゲーム機であるはずなのに、評価に違いが出るのはなぜなのか。


今回はXboxに対しての評価の違いによって表れた、期待派メーカーと懐疑派メーカーのXboxへの参入理由を解き明かすと共に、最終的にそれぞれのメーカーで、異なった評価になってしまった背景を考えてみる事にしたい。(つづく)

→続きはこちら:「懐疑派の参入理由」