2007年12月08日

過去のコラム編集:2001年9月「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part4

当該のゲーム業界記事は、2001年9月5日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」の最終章です。


2007年現在では、ニンテンドーDSの登場で大人がゲーム市場の主役に
なりつつありますが、当時ではゲーム業界の熱い視線はまだまだ子供に
注がれたままでした。業界が、その子供に向けた施策を今回のコラムでは
取り上げております。


「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part4

第四章(最終章):「未来志向」


ソフトメーカーが子ども市場に熱い視線を送るわけは大きく分けて三つあった。その中で,特に注目したい理由がある。それは「子どもを将来の顧客として育成すべく、子ども市場に力を入れている」という理由だ。


この理由に注目するわけは、その他の理由は現在の利益を追求することのみであるのに対し、これだけは将来を見据えたものであり、毛色が異なっているためだ。そのため、ここからソフトメーカーの未来志向の萌芽を垣間見ることができる


将来の顧客を育成することで、将来の繁栄を得るという未来志向は、他の様々な所で見ることができる。代表的なものにはプロ野球があろう。プロ野球では、球場に足を運ぶ子どもを対象に帽子などの野球グッズをあげたり、オフシーズンになると有名選手による野球教室やサイン会などを開催したりと、子どものころから少しでも野球に興味を持ってもらうように活動をしている。この活動の狙いは、将来の野球ファンを育成し、プロ野球というスポーツビジネスを継続的に成功させようとしている所にある。


同じ事がゲーム業界でも言えるだろう。いくらゲームビジネスが数千億円規模に成長したとはいえ、次なるゲームファンを育成していかねば、ゲーム業界は極端な話、無くなると言っても過言ではない。任天堂の山内社長は常々こう口にしている。


テレビゲームなんて娯楽でしょ。生活必需品ならともかく、テレビゲームは、別にないから生きられないというものじゃないんです。…ゲームなんてユーザーにとっては、いざとなったらなくても差し支えないということです』 (「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻 ビデオゲーム・巨富の攻防」 P261 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997)。


ゲームは遊びであり娯楽であるがゆえに、その存在を常に保証されているわけではない、と彼は言う。だからこそ、ソフトメーカーは自らの将来のために、未来のゲーム業界を支えてくれるであろう子ども達に、ゲームの面白さや楽しさをきちんと伝え、彼らをゲームファンとして育んでいかねばならないのだ。


その一つの方法として子ども市場に注力している現状は、ゲーム業界がプロ野球と同じように継続的にビジネスとして成功する要因を確実に作りつつあるといえるのではないだろうか。


勿論、ソフトメーカーは営利企業であるのだから、子ども市場に関わる以上はそこで利益を挙げなければならない。だが、利益というものはいま手に出来る利益だけではないはずだ。将来的に得られる利益もその中に当然含まれるのではないか。


だとすると、仮にソフトメーカーが子ども市場で商品やサービスを提供し、その結果として赤字になったとしても子ども市場から簡単に撤退するべきではない。それは、現在の利益を重んじるばかりに将来の利益を損ねてしまう可能性があるからだ。格言にある「損して得とれ」の言葉の通り、たとえ今は損をしたとしても将来的にそれを大きく上回るような得をすればよいのである。


そうなると、子ども市場は“市場”と表現するよりも、次世代のゲームファンの“育成場”であると言ったほうが良いのかもしれない。“市場”から“育成場” への発想の転換は、従来の価値観だけで子ども市場を見ていると犯してしまうかもしれない、大きな失敗を避けるために必要になってくる。


「育成なくして未来なし」。そういう視点を第一に持って、子ども市場を考える事が出来た時、産業として歴史的にまだまだ未熟なゲーム業界は、大人への階段を一歩のぼったことになるだろう。(おわり)

2007年12月07日

過去のコラム編集:2001年9月「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part3

当該のゲーム業界記事は、2001年9月5日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」の第三章です。


2007年現在では、ニンテンドーDSの登場で大人がゲーム市場の主役に
なりつつありますが、当時ではゲーム業界の熱い視線はまだまだ子供に
注がれたままでした。業界が、その子供に向けた施策を今回のコラムでは
取り上げております。


「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part3

第三章:「隠れた狙い」

ソフトメーカーが子ども市場を狙う理由は「6つの財布」と「顧客の育成」の二つにあった。確かに「子ども市場」には、子ども市場が持っている6つの財布による購買力の高さがあり、ソフトメーカーが注力する分野として充分魅力的であるし、なおかつ子どもを幼いころからゲームに親しませておくことによって未来の顧客をも育成できる市場であった。


だが、子ども市場だからといって子どもだけに注目して話を進めるのは正しいと言えるのだろうか。多少見方を変えてみると、子どもには必ず親がいることに気付く。彼らもまた、子ども市場の中では子どもと同じように重要な立場にあるため、忘れてしまってはいけないだろう。


AV(音響・映像)ソフトの販売・レンタルを行う「TSUTAYA」はこの夏に小学生以下の子どもを対象に、来店するだけでプレゼントを渡す企画を行った。狙いは子ども、ではなく親だ。『狙いは親世代である三十−四十代を会員として取り込むこと。同年代のTSUTAYA会員は全国で六百万人を超すが、ニ十代会員と同程度にすぎず、開拓余地が大きいとみている』(2001年7月19日 日経流通新聞MJ)。


この記事から、TSUTAYAには子どもにプレゼントを渡す企画を実施することで、子どもに強い来店動機を与え、親を店まで引っ張ってきてもらいたかったという意図があったといえるだろう。言葉は悪いが、TSUTAYAは親を取りこむ一手段として、子どもをダシに使ったのだ


子どもに訴えることで、親をも顧客化するTSUTAYAの手法はソフトメーカーが子ども市場に注力している理由を知る良い答えとなる。つまり、ソフトメーカーは子どもを利用することで、親をも顧客としてしまおうと狙っているのだ。


子ども向けのゲームやゲームコーナーの存在は、その子どもを連れてくる親に、ゲームに触れさせる絶好の機会を作る。それは、それまでゲームを触れたことの無い人や、ゲームから離れていた人を顧客化できる良いきっかけになるかもしれないのだ。


ゲームと一口に言っても、そのジャンルは様々にある。その中には大人がやっても十分楽しめるゲームは数多くある。ゲームソフトの分野で言えば、コーエーの「信長の野望」などがその代表格になるだろう。


子供向けの商品やサービスを提供することで、こうしたゲームの魅力を購買力のある親に知ってもらえれば、ソフトメーカーとしては願っても無いことであろう。なぜなら、子どもの購買力を遥かに上回る親が顧客となってくれるのだから。(つづく)


続きはこちら→最終章:「未来志向」

2007年12月04日

過去のコラム編集:2001年9月「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part2

当該のゲーム業界記事は、2001年9月5日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」の第二章です。


2007年現在では、ニンテンドーDSの登場で大人がゲーム市場の主役に
なりつつありますが、当時ではゲーム業界の熱い視線はまだまだ子供に
注がれたままでした。業界が、その子供に向けた施策を今回のコラムでは
取り上げております。


「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part2

第二章:「現在と未来」

子ども市場にソフトメーカーが注目する理由は大きく分けて二つある。まず、一つ目の理由だが、これを知るためには高齢化社会と少子化という社会的なキーワードを読み解かねばならない。


現在の日本は急速に高齢化の波に飲まれている一方で、少子化が進んでいる。ある試算では、このままの状態が続くと、2025年には日本人の四人に一人は 65歳以上の高齢者で占められるとされている。反対に、一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均は二人に届いておらず、子どもの数が減少していく少子化現象が進んでいる。


高齢化と少子化が同時に進む状況下にあっては、一家の中に大勢の大人と、子どもが一人という家族構成が当たり前になってくる。そうなると、一人の子どもに対しては『6つの財布』(2001年2月15日日経流通新聞)が付いてくることになる。


6つの財布とは、父・母・祖父母(父方と母方)の6人のそれぞれの財布の事だ。つまり、少子高齢化現象は、一人の子どもに対しての支出の割合を以前よりも高くさせているのである。だから、ソフトメーカーはこの6つの財布を目当てにして、子ども市場に大きな注目をし、力を入れているのである。


ソフトメーカーが子ども市場に注目する二つ目の理由としては、将来を見据えた投資という意味合いもある。一つ目の理由は子どもの背後にある6つの財布をターゲットにすることで、今すぐに利益を得ようとする“現在の利益”を重視した理由だったのに対し、今回の理由は将来的な利益を得るためのものだ。では、将来的な利益とは一体なにか。それは、子ども達を次世代の顧客として育成することで、将来彼らがもたらしてくれるであろう利益の事だ


セガトイズの大人気商品「ピコ」。この「ピコ」は『絵本やペンを組み合わせた子ども向けのコンピューターで、テレビ画面と連動させて遊ぶことができる』 (2001年7月12日日経流通新聞MJ)電子知育玩具であるが、最近はパソコン接続キットを用いることでインターネット上の「ピコタウン」に入場できるようになった。


「ピコ」をパソコンに接続させた狙いは『パソコン教育が小学校にも広がってくるのを見据え、小さいころからパソコンに慣れてもらおう』(同)とするものである。要するに、幼いころからパソコンに触れさせる事で、パソコンに興味を持ってもらうことが大きな目的なのである


このような目的はゲームにも当てはまる。つまり、ソフトメーカーは子どもを幼いころから「キッズステーション」やゲームセンター内にあるゲームコーナーなどで、ゲームに触れさせる事で、ゲームに興味を持ってもらい、ゲーム業界の次なる顧客になってもらいたいと考えているのだ


今は、遊びが一層多様化し、ゲーム以外にも子ども達の間で人気になる面白い遊びは数多くある。一例を挙げれば、コナミの「遊戯王」に代表されるトレーディングカードやタカラの「ベイブレード」など。必ずしも、ゲームが子ども達の遊びとして選ばれる保証はどこにもないのである。


だからこそ、ソフトメーカーは、次の顧客になるであろう子どもに、幼いころからテレビゲームやゲームセンターに触れ親しんでもらい、ゲームは楽しいものだと実感してほしいのだ。そうなるためには、子ども市場に力を入れ、子どもを顧客とすべく育成していかねばならない。その育成法のひとつがゲームソフト「キッズステーション」であり、ゲームコーナー「キッズスタジアム」「キッズパーク」なのである。


結局、ソフトメーカーは子ども市場に注力することで、現在の利益と将来の利益という二つの効果を狙っているのだ。(つづく)


続きはこちら→第三章:「隠れた狙い」

2007年12月02日

過去のコラム編集:2001年9月「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part1

当該のゲーム業界記事は、2001年9月5日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」の第一章です。


2007年現在では、ニンテンドーDSの登場で大人がゲーム市場の主役に
なりつつありますが、当時ではゲーム業界の熱い視線はまだまだ子供に
注がれたままでした。業界が、その子供に向けた施策を今回のコラムでは
取り上げております。


「子供を狙え 〜メーカーの未来志向〜」Part1

第一章:「熱い視線」


最近、ゲーム業界では子ども向けのゲームソフトやサービスが次々に発表されている。家庭用ゲーム機でゲームをしながら楽しく遊べるゲームソフトシリーズ「キッズステーション」はその代表格であろう。


同シリーズを手掛けているバンプレストは2002年春までにシリーズ合計で100万本を売り上げる計画を立てており、「キッズステーション」シリーズを10作品投入するという。これまでの累計販売本数が30万本程度であることを考えれば、かなり強気の姿勢だ。


「キッズステーション」にはアトラスやサン電子もソフトを投入しているが、なかでもアトラスはディズニー・インタラクティブと提携し、ディズニーキャラクターを活用したソフトを2002年3月までに5作品発売するとしている。


アトラスは今の所、ディズニーとの提携を「キッズステーション」用ソフト以外に応用していないことを考えると、子ども向けの商品のためだけにディズニーとの提携に踏み切ったと言える。そういうことからも、アトラスの子ども向け商品に対する並々ならぬ力の入れ具合が、ここから読み取れる。


子ども向けに配慮したサービスは、主にゲームセンターで行われている。ナムコは既存のゲームセンター内に子ども向けのゲームコーナー「キッズスタジアム」を昨年新設し、今年は年内までに現在の2店舗から大幅増の33店舗に増やす計画だ。


同様にテクモも「キッズパーク」と呼ばれるゲームコーナーをショッピングセンター内にある全ゲームセンターに設置するとしている。アミューズメント施設を運営するプレビは、幼児家族向けのゲームセンター「トドラーファミリー」を導入し始めた。


ゲームとは直接的に関連は無いものの、玩具メーカーのセガトイズの大人気商品である電子知育玩具「ピコ」もこれまでの販売方法を変えつつある。テレビCM を全国に拡大したり、ピコ売り場の刷新やインターネット上に「ピコタウン」を作ったりと、懸命に販促活動に努めている。


こうして見ると、子ども向けの商品やサービスが以前よりも強化されているのが分かる。つまり、各社とも子ども市場に対して熱い視線を送っているのだ。しかし、なぜ子ども市場がもてはやされるのであろうか。どうして、各社は子ども市場に力を入れているのだろうか。今回は、そこに焦点を絞って考えてみたいと思う。(つづく)


続きはこちら→第二章:「現在と未来」