2008年01月12日

過去のコラム編集:2001年7月「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part4

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年7月10日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」の第四章(最終章)です。


ゲームソフトメーカーはゲームだけ作っていれば良い、という時代は過ぎ去り、今では如何に自社の強みがゲームソフト事業以外で発揮できるかが重要になりつつあります。2001年当時でもそれは変わらない状況だったと言えます。現在において、半ば当たり前のようになっているゲームソフトメーカーによる多角化戦略を当コラムでは検証致します。


「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part4
第四章(最終章):「世界企業への道」


2001年2月15日の日本経済新聞に、ゲーム会社についてこんな指摘があった。


日本はゲームソフトを世界に供給しているが、米ハリウッドのように一つのアイデアから多数のヒット作品を生み出す投資効率を考えた経営が根付いていない。時には巨額の投資負担に耐えながら、安定した収益力を堅持する。日本のゲーム会社が世界へ飛躍するために欠かせない条件である。


日経新聞の主張は、ゲームソフトを作り出すためのアイディアが、ゲームソフトだけに使われ、それ以外に生かされていない日本のソフトメーカーの経営方針に疑問を投げかけているものである。


単一のアイディアから多数のヒット作を生み出すやり方が根付いているもののひとつとして、アニメがあろう。アニメの場合、一つの作品を放映、または上映しただけでは決して終わらない。そのアニメ作品を多方面に広く利用するのが一般的だ。


例えば、アニメをビデオ・DVD・LD化して販売したり、アニメに登場するキャラクターを活かしたキャラクター商品の製作・販売などは、ごく当たり前に行われている。アニメもゲームソフト同様に総じて開発費は高く、ヒットするかどうか事前に予測する事は難しいハイリスクなビジネスである。だから、アニメを一つの利用法で留めておくことはせずに、様々な形で利用する事で、リスクを出来うる限り避けているのである。


要するに日経新聞は、ソフトメーカーはアニメと同じような戦略を執って、収益の安定化を図るべきであり、それが世界企業への飛躍の道であると提言しているのである。


そんな助言を知ってか知らずか、ソフトメーカーは収益の安定化のために新規事業を手がけ始めている。日経新聞の言う通りに、安定した収益を手に入れようと動き出しているのだ。だが、おそらく、この一連の動きは世界企業への飛躍を目指したために行われたものではないだろう。


収益の安定化のための施策が、世界企業へ飛躍するための第一歩であるとは、考えてもいなかったはずである。なぜなら、今回の新規事業は、あくまでも、以前より高まったゲーム事業におけるリスクを少しでも和らげる目的で、立ち上げられたものであるからだ。「飛躍」より「安定」の方を手に入れようとしていたソフトメーカーが、「世界企業」という大きな目標まで視界に入れていたとは考えにくいのだ。


こうしてソフトメーカーは結果として、世界企業への道を踏み出した事になった。決して望んでいた訳ではないゲーム事業のハイリスク化が、世界企業への第一歩になるのであるから、世の中、何が幸いするかわからない。「ピンチは最大のチャンス」という言葉があるが、まさにゲーム事業のハイリスク化によって訪れたソフトメーカーのピンチが、世界企業への飛躍のチャンスになったのである。


果たして、ソフトメーカーは、このチャンスを活かすことが出来るのであろうか。その答えはすべて、収益の安定を達成するために立ち上げた新規事業が鍵を握っている。


図らずも新規事業には、とてつもない重責が課せられた感があるが、ゲーム業界の未来のためにも、成功することを祈るばかりである。(おわり)

2008年01月11日

過去のコラム編集:2001年7月「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part3

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年7月10日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」の第三章です。


ゲームソフトメーカーはゲームだけ作っていれば良い、という時代は過ぎ去り、今では如何に自社の強みがゲームソフト事業以外で発揮できるかが重要になりつつあります。2001年当時でもそれは変わらない状況だったと言えます。現在において、半ば当たり前のようになっているゲームソフトメーカーによる多角化戦略を当コラムでは検証致します。


「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part3
第三章:「なぜ“今”なのか」


ゲーム事業はハイリスク・ハイリターンであるから、収益の安定化の為に新規事業を手がけている。これがソフトメーカーが新規事業に進出する主な理由であるのだが、こうした動きは最近、急に増えている感がある。何故だろうか。


そもそも、ゲーム事業がハイリスク・ハイリターンであるなら、どうして昔から新規事業を行わずにいたのだろうか。ソフトメーカーはゲーム事業だけでは収益が不安定であると、ゲームビジネスを始めた時点で認識していたはずである。


それなのになぜ、今になって収益を複数化する方針を打ち出したのであろうか。もしかしたら、最近の新規事業への注力はゲーム業界全体の今日的な背景があるからではないだろうか。


そのような観点から見てみると、確かに思い当たる点はある。それは、高性能ゲーム機の登場によるゲーム開発費の高騰や、ゲーム業界全体の売り上げ低迷などである。


以前なら一億、二億円で作ったが、最近は五億、十億円をかけるのが珍しくなくなった』(2001年2月15日 日本経済新聞)。


こう語る開発担当者の声が、ソフトメーカーの苦悩を表している。ファミコン時代であれば、1000万円〜2000万円程度の開発費があれば十分ソフトを開発する事ができた。


しかし、新しいハードが発売されるにつれて高まるゲーム機の性能に伴い、開発費はうなぎ上りで激増、いまでは一億を平気で超える資金でさえ、充分ではないというのである。


ゲーム事業は過去の時点であってもリスクが高いと思われていたのに、近頃ではその何十倍の資金を投入しなければ、ソフトを満足に作る事さえも出来ないのだ。しかも、そうやって製作したソフトが売れるとは限らない。


以前なら三十万本は売れたソフトが最近では二十万本しか売れない。ユーザー動向がつかみにくくなった』(同)。ナムコの担当者は売れないソフトについて、こうつぶやく。


期待したほどにソフトが売れなくなっている状況は、ナムコ特有の現象ではない。2000年9月に発行された日経流通新聞には、スクウェアの和田氏が「売れないソフト」について次のように語っている。


『我が社はFF9に先立ち、昨年七月に“聖剣伝説レジェンド オブ マナ”、十一月に“クロノ・クロス”を必勝の構えで売り出した。いずれも従来なら間違いなく百万本以上出荷できる作品だったが、二〇〇〇年三月期末までの結果はそれぞれ七十三万本と七十五万本に終わった。』(2000年9月5日 日経流通新聞)


これらの現状をまとめると、ソフトメーカーは非常に高額な開発費と売れなくなってきたソフトの板ばさみにあっていると言えるのだ。単純に考えても、ソフトメーカーのリスクは前にも増して高まったことは明らかなのだ。


だからこそ、今、ソフトメーカーは新規事業に積極参加し、更にハイリスク化したゲーム事業のリスクを何とかして緩和しようと懸命になっているのである。(つづく)


続きはこちら→第四章(最終章):「世界企業への道」

2008年01月09日

過去のコラム編集:2001年7月「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part2

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年7月10日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」の第二章です。


ゲームソフトメーカーはゲームだけ作っていれば良い、という時代は過ぎ去り、今では如何に自社の強みがゲームソフト事業以外で発揮できるかが重要になりつつあります。2001年当時でもそれは変わらない状況だったと言えます。現在において、半ば当たり前のようになっているゲームソフトメーカーによる多角化戦略を当コラムでは検証致します。


「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part2
第二章:「収益安定化」


ソフトメーカーがゲーム事業以外の新規事業を行う理由は、企業としての収益の安定を目指すためである。ゲームビジネスは基本的にハイリスク・ハイリターンであり、大きく利益を上げられる可能性がある反面、大失敗する危険性も孕んでいる。


これは、ゲームが遊びのひとつであることに起因している。人は皆、遊びには楽しさを求めていることは疑いようも無い事実である。そのため、つまらない遊びより、面白い遊びの方を常に欲している。言い換えると、面白い遊びは受け入れられ、つまらない遊びは見向きもされないことでもある。


このような選別は、ゲームソフトも同じである。面白いソフトならば、人々の間で人気となり、上手くいけばミリオンセラーも夢ではないが、反対に面白くも可笑しくもないソフトならば、その存在を世に殆ど知られる事なく消え去ってしまう可能性が高い。


ゲームソフトはヒットするかしないかの二つに一つ。』 (2001年5月18日日経産業新聞)と主張するあるソフトメーカーの幹部のことば通り、ゲームソフトは当たりか外れかしかないのである。だから、ゲームビジネスはハイリスク・ハイリターンと言われるのだ。


ゲームビジネスを行う以上は、このビジネス特有のハイリスク・ハイリターンに良くも悪くも振りまわされることになる。つまり、ヒット作の有無によって企業全体の収益が上にも下にも大きく振れてしまうのである。


最近の具体例では、娯楽機器やゲームソフトを手がけているアトラスが良い例であろう。アトラスは 96年から97年にかけて写真シール機「プリクラ」を大ヒットさせ、97年3月期には40億円を超える利益を生み出したことがある。しかし、その後にプリクラの次のヒット作を作り出せず、プリクラブームの終焉によって2年後の99年3月期には逆に60億円を超える巨額な赤字を計上している。


このように、ゲームビジネスはヒット作があるか無いかによって大きく収益が変動してしまうのである。これを少しでも改善し、大赤字に陥ることなく、常に黒字にする状態にするためにはゲームビジネス以外で収益を見こめるビジネスを行う必要があったのだ。


だからこそ、各ソフトメーカーはゲーム事業で得た技術などを、ゲームビジネスではない映画事業やパチンコ・パチスロ事業などに投じて、収益を増やそうとしているのである。

結局、ソフトメーカーの新規事業への進出は、収益が事前に予想しにくいゲーム事業だけでなく、それ以外の事業を手がける事によって、収益を稼ぐ方法を複数化し企業全体としても業績の安定化を図るための対応策だったのである。(つづく)


続きはこちら→第三章:「なぜ“今”なのか」

2008年01月08日

過去のコラム編集:2001年7月「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part1

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年7月10日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」の第一章です。


ゲームソフトメーカーはゲームだけ作っていれば良い、という時代は過ぎ去り、今では如何に自社の強みがゲームソフト事業以外で発揮できるかが重要になりつつあります。2001年当時でもそれは変わらない状況だったと言えます。現在において、半ば当たり前のようになっているゲームソフトメーカーによる多角化戦略を当コラムでは検証致します。


「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part1
第一章:「新規事業」

ドリームキャストの生産終了を宣言し、経営再建に取り組んでいるセガは2001年6月19日、それまでセガの事業の中心であったゲーム事業以外の新規事業にも積極的に参入する発表を行った。具体的にはゲームソフト事業で培った技術(CG技術・バーチャルリアリティー技術・ネットワーク技術など)を多方面に生かせるような事業を行う、としている。


その主なもののひとつとして、CG技術・3Dサウンド技術等を活用したアニメーション制作用ソフト「Animanium」(アニマニウム)がある。セガは、この「アニマニウム」を使い、アニメ番組「まみむめ☆もがちょ」をアイデアファクトリーと共同で制作中であり、今年7月にテレビ東京系列で放映する予定だとも付け加えている。


このような新規事業は、他にも複数あり、3年後にはこれらの売り上げを100億円にする目標であるという。


新規事業を手がけているソフトメーカーはセガ以外にも数多くあるスクウェアは自社の看板ソフト「ファイナルファンタジー」を存分に活用する方針を打ち出し、オンライン事業や映画事業にも進出している。ナムコもスクウェアと同様に自社の人気ソフトを映画化する企画があるとすでに発表しているのだ(平成13 年3月期ナムコ決算短信より)。


ナムコはこれ以外にもパチンコ事業にも注力している。現在、パチンコ・パチスロ業界では、人気キャラクターを使用した機種が増加傾向にあるため、それを多数抱えるソフトメーカーなどは自社の資産を有効活用できる位置にいるのだ。そのためか、ナムコのほかにはテクモもパチンコ・パチスロ事業に参入しているのである。


一風変わった新規事業を手がけているのはコナミであろう昨年フィットネスクラブ運営企業であるピープル(現コナミスポーツ)を買収し、ヘルスケア事業に参入したコナミは新たにヘルスケアエンタテイメント事業本部を設置、コナミが得意とする体感型ゲーム機器を利用して、健康と遊びを結びつけたヘルスケアエンタテイメント機器を生み出していく方針でいる。

以上のように大まかにソフトメーカーによる新規事業を拾い上げても、これだけあるのだ。まさに脱ゲーム事業化の流れがこの状況から見てとれるのであるが、ではなぜこうした動きがソフトメーカーの間で広まっているのであろうか。


元来、これらの企業はゲームソフトメーカーなのであるから、これまで通りにゲームソフトを作り続ければ良いはずである。それなのに現状は、ゲーム事業ではない他の事業に力を入れているソフトメーカーが数多くあるのだ。


一体、どうしてこのような事が起きるのであろうか。ソフトメーカーはどういう考えのもとで新規事業に参入しているのか。今回のコラムではゲーム事業以外に積極的に取り組んでいるソフトメーカーについて考察していきたい。(つづく)


続きはこちら→第二章:「収益安定化」