2008年03月10日

過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part5

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年5月27日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」の第五章(最終章)です。


今では当たり前になったソフトメーカー同士の提携ですが、当時ではまだ珍しく、それだけに注目度の高いニュースだったと言えます。スクウェアはエニックスと、ナムコはバンダイとそれぞれ経営統合を行ったため、現在ではこの提携は意味をなさないものになっておりますが、当時はそれなりに意義のあったものだと言えます。当コラムではそれを解き明かすために記されたものです。


過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part5
第五章(最終章):「相互監視」


今回の提携で既に成立しているかもしれない効果は「相互監視」ではないだろうか。最近のゲームソフトメーカーの業績ははっきり言って良くない。業績不振の煽りは、真っ先に株主が受けるのだが、各創業者は大株主であるがゆえに、その影響は大きい。そうした背景と、このままではいけないという将来への危機感があったために、今回の株式持合が行われたのではないだろうか。


株式会社である以上、会社は株主に対して経営状態を説明する責任がある。今回のゲーム三社も株式会社であるから、同様に株主に対して説明責任がある。そのために株主になると、その会社がどんな事をやろうとしているのかが分かるのだ。各創業者は、今回の持合によって、株主になるのであるから当然それを知る事ができる。さらに、各創業者は他の会社にとっては部外者にあたるため、第三者の立場から客観的に経営を判断する事が出来る


例えば、ある会社が収益の増加を目指し、新たにアミューズメント施設を新設したいと言ったとしよう。その時、株主である他の創業者は、既存のアミューズメント施設の不振を理由に新設を反対するかもしれないし、逆に収益が上がる施設にするために様々なアドバイスをするかもしれない。


彼らが狙っていた効果は、まさにこれではないだろうか。客観的立場から各企業の経営をチェックし、変な所があれば改善させたり、良い点があれば更に向上させる。三社の業績を恒常的に良くさせるために、各創業者は各企業を相互にチェックするという株式の持合体制を作る決断したと考えられるのだ。


提携会見で、各社の経営陣が「何も決まっていない」と連発したのは、まず最初に、各社の経営を相互に監視する体制を構築しようとしたからではないか。そのうえで、もっと包括的な提携の話も出たために、とりあえず「提携」という器だけを作り上げたのではないだろうか


今、例としてあげたアミューズメント施設の新設に際して、各創業者がアドバイスを送るだろうと言ったが、彼らは自らのアドバイスだけではなく、自らの会社の技術をも複合させれば、もっと良くなるのでないかと考えたための提携だったのだ。


もし、今後、何処かの会社で先程の例のように「アミューズメント施設の新設」の話が出た時には、各社が素早く協力できる体制を作り上げるために「提携」だけを先に結んでしまったのだ。だからこそ、会見の内容は、ほぼ無いに等しいものになってしまったのである


将来、この三社が結んだ提携は面白いものを生み出す可能性がある。特に、スクウェアの大型事業であるPOLは注目に値するだろう。今のままでは、採算割れするだろうと言われている事業に対して、ナムコ中村会長兼社長・エニックス福嶋会長はどのようなアドバイスをし、どのような協力体制を自社に指示するのであろうか。おそらく、ナムコ・エニックスはPOLに素晴らしいコンテンツを供給するだろう。逆にそうしなければ、提携した意味はなくなってしまう。


POL に対して何もしないのであれば、もともと提携などせずに、株の持ち合いだけに留めておけば良いはずだ。提携した以上は何かをするだろう。ただ、それが、何であるかはまだ分からない。スクウェアの今後の目玉の一つであるPOLに中途半端なものは出さないであろう。POLを見れば、三社の提携がうまく行くのか、或いはそうでは無いものになるのかが分かるような気がしてならない。(おわり)

2008年03月08日

過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part4

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年5月27日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」の第四章です。


今では当たり前になったソフトメーカー同士の提携ですが、当時ではまだ珍しく、それだけに注目度の高いニュースだったと言えます。スクウェアはエニックスと、ナムコはバンダイとそれぞれ経営統合を行ったため、現在ではこの提携は意味をなさないものになっておりますが、当時はそれなりに意義のあったものだと言えます。当コラムではそれを解き明かすために記されたものです。


過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part4
第四章:「プレイオンラインの共同利用」




プレイオンライン(POL)とはスクウェアが始めるネット事業のことである。スクウェアはオンラインゲームに大きな期待を寄せているため、そのプラットフォームになるネット事業POLには力を入れている。


今後発売される「ファイナルファンタジー10」は一部ネット対応になるし、続編である「11」は完全にオンラインゲームになる事がそれぞれ予定されている。スクウェアは徐々にオンライン化するファイナルファンタジーを活用して、POLを今後の収益源にしたいと考えているのだ。


ただ、POLは周囲から不安視されている。ドイツ証券の大屋高志アナリストは『FF11投入で一時的に増えても年間通じて五十万人弱を確保するのは困難』(2001年 2月20日 日経金融新聞)と述べ、POLの収支をゼロにする水準のために必要な会員数である50万人の確保でさえ難しい、との見解を示している。


そうした中で、ナムコやエニックスと提携するのは、スクウェアにとって大きな意味がある。なぜなら、ナムコやエニックスもオンラインゲームに大きな期待をしているからだ。エニックスの本多社長はオンラインゲームについて『ネットゲームは新市場を生むチャンスです。(略)ネットという新しい場で“第二のドラクエ”を生み出したいと思います』(2001年 5月5日日経産業新聞)と言っており、オンラインゲームに対して非常に意欲的だ。ナムコも基本的に同じである。


各社がそれぞれオンラインゲームを出すのであれば、スクウェアとしては自分のPOLを利用してもらいたいと考えるのは当然であろう。ただでさえ、POLは赤字になると言われているのだから、ファイナルファンタジー以外の、他の有力なコンテンツをPOLに集めることで、会員を増やし、収益を確保したいはずである。


一方、ナムコやエニックスにとってもPOLにオンラインゲームを供給するのは悪い話では無い。オンラインゲームはパッケージソフトと違い、一度消費者の手に渡ったらそれで終わり、という商品ではない。オンライン上にゲームが存在する限り、サーバーの管理などの維持運営費が常にかかる。こうしたコストを少しでも減らすためには、他社と共同して運営した方が得策だと考えるのは当たり前であろう


さらに、POLにオンラインゲームを供給すれば、POLにスクウェア・ナムコ・エニックスのオンラインゲームが集中する事になる。そうなると、「ゲームがたくさん出ているから、ファミコン・プレイステーションを買おう」というユーザー心理と同じように、ユーザーはオンラインゲームをやる際にはまず、POL の会員になる可能性がある。ゲームが集まることによって生まれる相乗効果は、三社にとって思いがけないほどのたくさんのユーザーをもたらすかもしれないのだ。


今述べた効果は非現実的なものではない。POLでの提携は高い確率で発表されるのではなだろうか。(つづく)


「POLの収支をゼロにする水準のために必要な会員数」は、先日新たに発表されたものによると約30万人に下がっている。


続きはこちら→第五章(最終章):「相互監視」

2008年03月07日

過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part3

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年5月27日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」の第三章です。


今では当たり前になったソフトメーカー同士の提携ですが、当時ではまだ珍しく、それだけに注目度の高いニュースだったと言えます。スクウェアはエニックスと、ナムコはバンダイとそれぞれ経営統合を行ったため、現在ではこの提携は意味をなさないものになっておりますが、当時はそれなりに意義のあったものだと言えます。当コラムではそれを解き明かすために記されたものです。


過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part3
第三章:「共同でゲーム開発」


提携した各社で同一のゲームを開発するのも、一つの提携効果である。2001年4月20日付の日経産業新聞は、カプコンとナムコが業務用ゲーム「ガンサバイバー2バイオハザードコード:ベロニカ」を共同開発すると報じた。カプコンの人気ゲーム「バイオハザード」を題材にし、体感型業務用ゲーム開発技術に優れたナムコが協力する事によって、両社が一体となってゲームを開発するという。


共同でゲームを開発する場合、先程記した開発機材の共同使用によるコスト削減だけではなく、また新たな効果もある。それは、各社が持っている、それぞれの強みを新ゲーム開発に投じることで、いままでになかった面白いゲームができる可能性が高まる点である。


ナムコとカプコンの例を見ると、家庭用ゲームとして大人気であったカプコンの「バイオハザード」をより体感的にしてゲームセンターでも遊べるようにするために、体感型業務用ゲームに優れた技術を持っているナムコと共同でゲームを作る事になった。


このことは、家庭用ゲーム「バイオハザード」にはそれほど存在し得なかった「体感性」を付加した新しいゲームを創造したことになる。つまり、バイオハザードの業務用ゲームをカプコンとナムコが共同製作する事により、新しい面白味が加わったのである。


これは、ナムコ一社でも、カプコン一社でも作り上げる事は、難しかったであろう。それぞれの強みを持っている企業が一緒になって面白いゲームを作り上げることができる。これこそ、提携の効果ではないだろうか。


当然ながら、こうしてできたゲームが全てヒットするわけではないが、ゲームをヒットさせるためには、絶対に面白くなければならない。提携によって面白いゲームが出来たとなれば、ゲームがヒットする確率以前より高まったと言えるのだから、効果は製品が出来た時点で既に生まれてきているのである。


このように共同でゲームを作る場合、方向性さえ間違えなければ、面白いゲームが出来るという高い提携効果を見こむことが出来る。さらにナムコはカプコンとの経験があるので、エニックスやスクウェアと共同でゲームを製作することには前向きであろう。


エニックスやスクウェアには、それぞれの強みがあるし、共同製作によって面白いゲームが作れるのであれば、彼らも積極的に参加するだろう。従って、三社の共同製作ゲームが近い将来、誕生するのも夢ではないと考えられるのだ。(つづく)


続きはこちら→第四章:「プレイオンラインの共同利用」

2008年03月06日

過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part2

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年5月27日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」の第二章です。


今では当たり前になったソフトメーカー同士の提携ですが、当時ではまだ珍しく、それだけに注目度の高いニュースだったと言えます。スクウェアはエニックスと、ナムコはバンダイとそれぞれ経営統合を行ったため、現在ではこの提携は意味をなさないものになっておりますが、当時はそれなりに意義のあったものだと言えます。当コラムではそれを解き明かすために記されたものです。


過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part2
第二章:「コスト削減」


提携によって生まれる効果として、最も期待できるのが、コスト(費用)の削減である。現在、ゲームの開発費はうなぎ上りで上昇している。昨年発売されたスクウェアの大人気ソフト「ファイナルファンタジー9」の開発費は40億円と言われているし、プレイステーション2(PS2)で初のミリオンヒットになったカプコンの「鬼武者」では10億円がかかったという(2000年 7月7日夕刊読売新聞・2001年 4月24日日経流通新聞MJ)。



多額な開発費をかけて、確実に売れれば良いが、決してそんな事は無い。大規模な開発費を投入して製作したゲームであるにもかかわらず、期待通りには売れない例は数え切れないほど存在する。企業の側としても、そのようなリスクは出来る限り避けたいはずなのだ。


ただ、今はゲーム機の性能も飛躍的に向上してるため、それに合わせたゲームを作るとなると、やはり高額の開発費が必要になる。例えば、ゲームを開発するためには無くてはならない開発機材であるが、PS2の場合、一台200万円もする大変高価なものなのである(週刊ファミ通 2001 3/16 エンターブレイン P99)。当然、ゲームは開発機材一台で出来るはずも無いので、複数台必要になる。仮に、50台揃えるとなると、もうそれだけで一億円になる。


今のような現状は、ゲームソフトメーカーにとって決して好ましい事ではない。メーカーにとって売れる保証が無いゲームソフトの開発費は低ければ低いほどよい。もし、ゲームが売れないとしても、安い開発費であれば大きな損害を受けずにすむし、逆にゲームがヒットすればそれだけ多額の利益を得ることができるのだから。


高額な開発費を少しでも減らすために、他社と提携するのは充分意味がある。提携による開発費抑制の分かりやすい例としては、開発機材の共同利用があろう。一つの機材を複数の会社が使うことで、高価な開発機材を個別に買わなくてもすむようになる。どうせ、PS2向けにソフトを作るのであれば、なにも一台200万円もする高価な機材を別々のメーカーが揃える必要は無いのだ。


提携によって開発機材を買わずに済んだのであれば、開発費抑制には成功したと言える。特にナムコ・スクウェアは2001年3月期の決算において赤字なのであるから、地味ではあるが、着実に減らす事の出来るコストは徹底して減らしていくと考えられる。なので、すでに三社の間では具体的な話が進んでいるのではないだろうか。(つづく)


続きはこちら→第三章:「共同でゲーム開発」

2008年03月05日

過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part1

当該のゲーム業界コラム記事は、2001年5月27日前後(詳細な月日は現在、不明)にメールマガジン「ゲームいろいろ情報」にて掲載された連載記事「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」の第一章です。


今では当たり前になったソフトメーカー同士の提携ですが、当時ではまだ珍しく、それだけに注目度の高いニュースだったと言えます。スクウェアはエニックスと、ナムコはバンダイとそれぞれ経営統合を行ったため、現在ではこの提携は意味をなさないものになっておりますが、当時はそれなりに意義のあったものだと言えます。当コラムではそれを解き明かすために記されたものです。


過去のコラム編集:2001年5月「ナムコ・エニックス・スクウェア提携」Part1
第一章:「奇妙な会見」


ゲームソフト大手のナムコ・エニックス・スクウェアは、2001年4月23日に三社が事業提携をしたと発表した。具体的な内容は、各社の創業者であり大株主であるナムコ中村雅哉会長兼社長、スクウェア宮本雅史元社長、エニックス福嶋康博会長の三者が、相互に保有株式の一部を今後、持ち合うようにするというものであった。ただ、株式の持ち合いとは言っても、株式の大部分を相互保有するわけではなく、わずかな数を持ち合おうとするだけである。


4 月23日に行われた三社の提携発表会見で、唯一中身のあった話はこれだけであった。各創業者が三社の株を僅かに持ち合う。たったこれだけの話が「ゲームソフト大手三社の提携」と言うのであるから、ちょっと普通ではない。通常、企業同士が提携会見を行う場合、どんな分野で協力するのかを予め明確にするのが当たり前である。


例えば、昨年、ゲームソフトメーカーであるアトラスと出版大手の角川書店が提携した際、今回と似たように、角川書店がアトラス株の10%を保有する事が発表された(ただし、今回の提携と違う所はアトラスが、角川書店の株を持つような事は無かった点である。つまり、相互保有ではなかったのである)。


この提携では、株式保有だけでなく、アトラスのゲームソフト開発力と、角川書店の宣伝広告力を活用して、主としてゲームソフト事業で協力していくことが公にされている。このアトラス・角川書店の提携発表に代表されるように、普通、提携会見では何について共同してやっていくのかを明確に打ち出す。アトラス・角川書店の場合は「ゲームソフト事業を共同してやっていく」である。


しかし、今回のナムコ・エニックス・スクウェアの場合は、そうではなかった。なぜだろうか。その答えは次の言葉に隠されている。


『何も決まっていない』(2001年 5月2日 日経産業新聞)


この言葉を会見に現れた各社の経営陣は連発したという。だが、それもそのはず。各社は、この株式持合いの話を、それぞれの創業者から聞かされたばっかりであったのだ。そのため具体的な提携を検討する暇などあるはずが無かったのである。つまり、この具体的な中身に乏しい提携会見は、各社の大株主の独断専行によって生まれたものであるとも言えるのだ。


では、彼らは一体、提携によって何をしようとしているのだろうか。今回のコラムでは、何の具体案の無いナムコ・エニックス・スクウェアの提携がどんな意味を持っているのかを予想してみたい。(つづく)


続きはこちら→第二章:「コスト削減」